出題頻度
過去5年間の関節リウマチに関連した出題数をまとめました(みんなのリハ室調べ).全て専門問題です.
51回 | 52回 | 53回 | 54回 | 55回 | |
PT | 2(1) | 2(1) | 2(0) | 2(0) | 1(0) |
OT | 1(1) | 2(0) | 3(2) | 3(1) | 3(2) |
( )は実施問題数です.理学療法,作業療法ともに必ず出題されています.病期(stage)や機能状態(class),検査所見,ADL,介入プログラム,装具に関する問題が出題がされます.共通でも出題されますが,ほとんどが専門で出題されます.
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)
関節リウマチは,多発性の関節炎を主症状とする原因不明の進行性炎症疾患です.罹患率は男性に比べ女性が圧倒的に多いです(40-60歳代に発症することが多い).病変は滑膜炎から始まり,現局的な疼痛・腫脹が全身へ広がっていきます.
診断基準
以前は,アメリカリウマチ学会の診断基準(1987),日本リウマチ学会の早期関節リウマチの診断基準(2001)が共通問題で出題されていました.しかし,2010年にACR/EULAR関節リウマチ分類基準が一般的になり,過去5年で診断基準に関する出題はありません.そのため,診断基準の詳細を覚える必要性は低いと思います.
検査所見
診断基準に比べ出題される可能性が高いのが検査所見です.
血液検査
血沈亢進,CRP陽性,高γ-グロブリン血症,リウマトイド因子(RF)陽性
関節液
蛋白量・細胞数が増加し混濁
X線検査
骨萎縮,骨びらん,軟骨下に嚢胞状骨欠損,関節裂隙の狭小化,脱臼(亜脱臼)
ココがポイント
血液検査は出題される頻度が高いです.赤字の項目は必ず覚えましょう!
症状
関節リウマチの症状は関節症状と関節外症状に分類されます.非常に重要な項目になります.
症状 | |
関節症状 | 朝のこわばり,疼痛,腫脹(滑膜・関節包の肥厚,関節液貯留),関節動揺性(ムチランス型),関節可動域制限,関節変形,筋力低下 |
関節外症状 | 発熱(37℃台の微熱),腱鞘炎,貧血,神経症状(環軸関節亜脱臼,手根管症候群など),骨粗鬆症,呼吸器症状(肺線維症),リウマチ結節(皮下結節),アミロイドーシス,腎障害,腱鞘炎,眼症状(シェーグラン症候群など) |
分類
病期の分類(stage)
stage | 骨粗鬆症 | 軟骨破壊 | 筋萎縮 | 運動制限 | 骨破壊 | 変形 | 強直 |
Ⅰ | ○ | ||||||
Ⅱ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | ||
Ⅲ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
Ⅳ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
○:必須,△:必須ではない(どちらでもよい)
stageはⅠ〜Ⅳに分類されます.骨粗鬆のみがstage Ⅰ,変形があるとstage Ⅲ,強直があるとstage Ⅳと覚えると楽だと思います.
ラーセンの分類
stage分類は身体の最も悪い部位の状態を判断されてしまう欠点あり.各関節ごとに分類するラーセン(Larsen)の分類が広く用いられる.国家試験でラーセンの分類の詳細を問われたことはありません.しかし,ラーセンの分類という設問は出ています.言葉だけでも覚えておきましょう!
機能状態の分類(class)
class | |
Ⅰ | 日常生活を完全に行える.活動(セルフケア ,仕事,趣味,スポーツなど)制限なし. |
Ⅱ | 動作時に痛みあり.日常生活や仕事は可能だが,趣味やスポーツの活動は限定される. |
Ⅲ | セルフケア,仕事(内容による)によって可能.趣味やスポーツは制限される. |
Ⅳ | 全ての活動が制限される.寝たきりや車椅子を使用する. |
日常生活の状態を把握するために使用されます.大まかに把握をして下さい.class Ⅰは正常,class Ⅱは趣味活動などに制限,class Ⅲは仕事にも制限,class Ⅳは全ての活動が制限されます.
変形
関節リウマチはさまざま変形になる可能性があります.ここでは,国家試験に頻出する変形のみ記載します.必ず覚えて下さい.
部位 | 変形 |
頸部 | 環軸関節亜脱臼(神経症状出現の原因) |
手関節 | 尺側偏位 |
手指 | スワンネック変形(側索に対する中央索の緊張増加),ボタン穴変形(中央索の断裂),母指Z変形(IP過伸展,MP屈曲),ムチランス変形(オペラグラス手) |
膝関節 | 外反膝(X脚変形) |
足関節 | 扁平足 |
足趾 | 外反母趾 |
特に作業療法士の試験では手指の変形が出題されます.写真や図を用いた問題が出題されていますので,変形を説明できるようにしましょう.
ADL指導
ADL指導は日内変動(午前の活動を避ける)を考慮します.そして,小関節ではなく大関節を使用するなど関節保護を優先します.
関節保護は,「疼痛を避ける」,「変形を避ける」,「安静と活動のバランスをとる」,「環境を整備する」です.そして,無駄な労力を省き(エネルギー保存),自助具,補助具の使用を検討します.
介入プログラム
運動療法
関節破壊を避けるため筋力増強は等尺性収縮を選択します,炎症が治るにつれた抵抗運動に移行しても大丈夫です.
関節可動域運動
疼痛が強く,逃避反応を防ぐために可動域運動は自動運動が原則です.状況に応じて自動介助運動,他動運動へと進めます.また,頸部屈曲は亜脱臼を起こしやすいため避けましょう.
国家試験対策問題
国家試験対策問題のDLはこちらをクリック
動画資料
参考文献
・能登真一ほか:作業療法評価学 第3版.医学書院.