意識障害を伴う対象者に対して理学療法や作業療法を実施する可能性があります。意識障害は大脳皮質のびまん性機能低下や上行性網様体賦活系障害により発生するため、中枢神経系の生命活動の指標になります。ここでは、意識障害の状態や評価について説明します。
意識障害
意識は覚醒と認知からなります。意識障害はこれらの働きが弱まった状態です。
意識障害は、意識混濁と意識変容に分類されます。意識活動の強さ(明るさ)が障害された場合を意識混濁,精神疾患様の病状を呈するものを意識変容といいます。
意識混濁
状態 | |
傾眠 | 刺激すると覚醒する。放置されれば眠り落ちる状態。合目的な運動も可能。 |
昏迷 | 強い刺激を与えると覚醒する。指示に対しある程度正しい反応を示す。 |
半昏睡 | 痛み刺激などに対して逃避反応などがみられる。尿便失禁あり。自発運動はほとんどなし。 |
昏睡 | 最も重篤な意識障害。自発運動なし。尿便失禁あり。強い刺激に反応がない。 |
症状の軽度の方から傾眠→昏迷(こんめい)→半昏睡→昏睡です。また、昏睡の状態で腱反射や角膜反射が消失した場合は深昏睡といいます。
意識変容
状態 | |
せん妄 | 軽度から中等度の意識混濁に興奮、錯覚、幻覚、妄想などが加わった状態。 |
もうろう状態 | 全体的な判断力が低下している状態。この状態のことは思い出せないことが多い。 |
アメンチア | 軽い意識混濁の状態。外界の認識が困難で、情動的に不安定な状態。 |
夜間のせん妄が「夜間せん妄」です。認知症と似た特徴がありますが、適切な対応により状態は改善されます。
評価
意識障害を客観的に評価するために一般的に用いられるスケールを紹介します。
Japan come scale(JCS)
この方法は意識レベルをⅠ・Ⅱ・Ⅲ群に大別し、さらに各群を3段階に分類しています。そのため,3-3-9度方式(3群を3段階に分類)と呼ばれます。意識晴明を0として全部で10段階に分類する。日本で頻繁に使用されている評価です。
上記の分類に加え、R:restlessness(不穏)、I:incontinence(糞便失禁)、A:akinetic mutism(無動無言症)、apallic state(失外套状態)の状態を組み合わせ記載されます。
例)Ⅱ-20 R(意識レベルが2桁で不穏状態が付随している状態です)
注意ポイント
Glasgow Coma Scale(GCS)
国際的に使用される評価です。JCSに比べ国際的に汎用されている。
E+V+Mでスコアを求めます(得点範囲: 3−15)。
JCSに比べ国際的に汎用されていますが、点数の組み合わせが120通りになり複雑です。また、挿管時や失語、運動障害(四肢麻痺など)には使用しづらいという欠点もあります。
Emergency Coma Scale(ECS)
JCSの欠点を補いつつ、GCSの利点を取り入れた開発された評価です。上記の2つに比べ、利用頻度は少ないように感じます。
まとめ
意識状態の評価について解説しました。回復期や生活期では意識混濁の対象者に理学療法や作業療法を実施することは少ないと思います。しかし、急変時などの対応では必要不可欠な知識になります。もしもの時のために学習しましょう。
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