実習対策講座|簡易上肢機能検査(STEF:Simple Test for Evaluating Hand Function)

簡易上肢機能検査(STEF:Simple Test for Evaluating Hand Function)は,上肢の動作能力(特にスピード)を客観的に把握する目的で開発されました.検査は大きさや形状,質量や材質の異なる物品を,指定されて位置まで移動させるのに要する時間を測定し点数化します.年齢階級別得点があり,3-80歳以上の対象者に実施が可能です.

事前準備

検査は座位で実施します.被験者にとって高い(or 低い)机や椅子の使用は避ける必要があります.また,肩関節可動域制限や座位が困難な場合は立位で実施することも可能です.検査・再検査の条件を一定にすることが重要です.

 

注意事項

検者は被検者と同側に位置する

検査者は検査に先立ちデモンストレーションを実施します.対面に比べ同側に位置することで被験者は検査を理解しやすくなります.また,心理的緊張も低くなります.

 

開始位置

すべての検査開始時の手の位置は検査台の中央です.これを「開始位置」として検査を開始します.

 

時間の計測

検査開始から終了までをストップウォッチで計測します.測定時間は小数点1位までとします.

 

検査開始側

検査は原則的に右手→左手の順に行います.ただし左右どちらかに(または両側)障害がある場合は障害の軽い側→重い側の順に行います.また,聞き手が左の場合は左手→右手の順に行います.

 

制限時間

すべての検査には制限時間があります.制限時間内に実施できない場合は,制限時間内に移動できた個数を記録します.しかし,検査に時間的余裕がある場合は被験者の疲労を考慮しながら,すべての移動が終了するまで時間を計測してもかまいません.

 

不能

検査中に移動物品を途中で落とした場合や所定の場所に移すことを誤った場合は最初からやり直します.ただし,3回以上失敗した場合は不能とします.しかし,検査に時間的余裕がある場合は被験者の疲労を考慮しながら,3回以上失敗しても検査を継続することは可能です.

 

上肢の観察

検査者は時間測定だけでなく,上肢や体幹,座位バランスや非検査側の状態など観察します.動作速度に影響を与えている要因を分析します.

 

検査

検査1(大球)

大球を右枠内に配置します.

そして反対側(この場合は左側)に大球をできるだけ早く移動するように指示をします.

検者はデモンストレーションとして大球3個を右枠から左枠へ移動させます.

どの大球から移動してもかまいません.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査2(中球)

中球を手前の枠内に左右に3個ずつ配置します.

できるだけ早く右側の中玉から,右枠に移動するように指示をします.

検者はデモンストレーションとして中球3個を右枠へ移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査3(大直方)

大直方を左枠内に外側・上側に寄せて配置します.

できるだけ早く大直方を右枠内へ移動するように指示をします.

どの大直方から移動してもかまいません.

検者はデモンストレーションとして大直方3個を左枠から右枠へ移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査4(中立方)

中立方を右枠の上縁と下縁に3個ずつ配置します.

できるだけ早く中立方を手前の枠内(左側)に移動するように指示をします.

どの中立方から移動してもかまいません.

検者はデモンストレーションとして中立方3個を右枠から手前枠内(左側)へ移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査5(木円板)

木円板を手前枠右上部に配置します.

できるだけ早く木円板を手前枠内の左側に移動するように指示をします.

木円板は左側から順番に移動します.

検者はデモンストレーションとして木円板3個を左側から手前枠内(左側)へ移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査6(小立方)

小立方を右奥枠外に配置します.

できるだけ早く小立方を手前枠内の左側に移動するように指示をします.

検者はデモンストレーションとして小立方3個を右奥枠から手前枠内(左側)へ移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査7(布)

検査台中央に布を上下3枚ずつ配置します.

きるだけ早く布を裏返しにするように指示をします.

どの布から裏返してもかまいません.また,裏返した布をきっちり並べる必要もありません.

検者はデモンストレーションとして布3枚裏返します.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査8(金円板)

金円板を手前の枠内に3個ずつ配置します.

できるだけ早く金円板を奥の枠内に移動させるように指示をします.

どの金円板から移動させてもかまいません.

検者はデモンストレーションとして金円板3枚を奥の枠内に移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査9(小球)

小球を検査台奥の枠内に配置します.

できるだけ早く小球を手前の枠内に移動するように指示をします.

どの小球から移動してもかまいません.

検者はデモンストレーションとして小球3個を手前の枠内に移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

検査10(ピン)

ピンを手前の枠内に3個ずつつまみやすいように傾けて配置します(右手の検査の場合は右傾き,左手の場合は左傾き).

できるだけ早くピンを奥の下縁の穴に差し込むように指示をします.

検者はデモンストレーションとして小球3個を手前の枠内に移動させます.

右上肢が終了した後に左上肢を検査します.

 

記録方法

得点プロフィール

STEFには検査結果を記録する記録用紙が準備されています.

検査1-10までの所要時間を記載して,所要時間をもとに得点プロフィールで点数化していきます.

記入例

◯で囲まれているのは右側の得点です(△が左側).右側の得点表で合計点を計算します.

 

検査・再検査のチェック

STEFは介入効果の判定にも使用できます.初回検査と再検査で所要時間,得点など変化を見ることができます.しかし,注意が必要です.ポイントになるのは記録用紙にある差の指標です.

例えば検査1の初回検査結果が11.4秒,再検査結果が10.5秒だったとします.

得点プロフィールから,それぞれ得点は初回検査が6点,再検査が7点になります.得点は1点向上し,所要時間は0.9秒(11.4-10.5)縮まりました.先ほど確認した検査1の差の指標は1.2(秒)でした.初回検査と再検査の所要時間の差は0.9秒で,差の指標の1.2秒より短いです.

そのため,得点は向上したが,早くなったとは言えません.逆も同様で初回検査が29.5秒,再検査が25.5秒だった場合,得点はそれぞれ1点ですが所要時間は4.0秒縮んでいます.そのため,得点上の変化は認めないが,早くなったと言うことができます.

 

参考文献




-評価法

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