絞扼性神経障害|理学療法士・作業療法士国家試験必修ポイント

絞扼性神経障害とは?

脊髄に出入りする末梢神経は身体各部位を走行しています.走行中に骨,靭帯,筋などにより形成された管腔(トンネル)を通過します.この管腔の部分で持続的に圧迫や異常刺激が加わった場合に起こる単神経障害を絞扼性神経障害と呼びます.

 

神経障害と絞扼部位

代表的な神経障害と絞扼部位を表に示します.

神経障害 絞扼部位
腕神経叢麻痺 胸郭出口症候群
尺骨神経麻痺 肘部管症候群,ギヨン管症候群
正中神経麻痺 手根管症候群,円回内筋症候群,前骨間神経麻痺
橈骨神経麻痺 回外筋症候群,後骨間神経麻痺
坐骨神経麻痺 梨状筋症候群
脛骨神経麻痺 足根管症候群

国家試験で出題される可能性があります.しっかり覚えましょう!

 

手根管症候群

絞扼性神経障害の中で発生頻度の高い手根管症候群を解説します.

手根管

手根管は8個の手根骨と屈筋支帯で形成される管腔です.手根骨の配列は手掌に対して凹状のカーブを描きます.

手根間の中を浅指屈筋深指屈筋長母指屈筋正中神経が通過します.手根管内圧が上昇することで正中神経が圧迫され絞扼性神経障害が生じます.

 

原因

特発性(原因不明)が多い傾向です.手の使い過ぎ,妊娠,閉経など女性に好発します.また,関節リウマチ,透析者のアミロイド性滑膜炎,ガングリオン,手根骨脱臼,変形性手関節炎などにより生じる場合があります.

 

症状

正中神経が圧迫されるため正中神経低位麻痺の症状が出現します.夜間就寝時や早朝に症状が強く寝る傾向です.

正中神経麻痺|理学療法士・作業療法士国家試験必修ポイント

正中神経の走行 正中神経の走行を示します.左から右へ遠位へ向かっている図になります.     正中神経は肘の前方を走行します.そして,長母指屈筋,長掌筋,浅指屈筋,円回内筋に筋枝を ...

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治療

症状が軽度の場合は手関節の固定やビタミンB12製剤を使用します(保存療法).強い疼痛,症状の進行,外傷や感染で生じた場合など保存療法で改善が認められない場合は,屈筋支帯(横手根靭帯)を切開して,正中神経への圧迫を除去する手根管開放術を実施します.近年は関節鏡視下で実施されます.

 

演習問題

絞扼部位と症状の組み合わせで誤っているのはどれか.2つ選べ.

1.手根管―猿手

2.梨状筋―下腿内側のしびれ

3.肘部管―tear drop

4.足根管―足底のしびれ

5.腓骨頭―下垂足

 

手根管症候群で正しいのはどれか.2つ選べ.

1.女性に比べ男性に多く発症する.

2.尺側の手掌に感覚障害が生じる.

3.手を振るとしびれが軽減する.

4.母指球筋の萎縮が認められる.

5.フロマン徴候は陽性になる.

 

参考文献

・野村嶬:標準理学療法学・作業療法学 専門分野 解剖学 第3版.医学書院.

・井樋栄二ほか:標準整形外科学 第14版.医学書院.

・立花勝彦ほか:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 整形外科学 第4版.医学書院.

 





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