呼吸はバイタルサイン(vital sign)の1つです.しかし,脈拍や血圧に比べ注目することが少ないと思います.ここでは,呼吸状態の観察評価について説明します.
呼吸運動
腹式呼吸(横隔膜呼吸)
横隔膜が収縮して胸郭腔を上下に拡大する呼吸様式です.吸気時に腹部が膨らみます.男性は腹式呼吸が優位になります.
胸式呼吸(肋骨呼吸)
肋間筋の収縮により胸郭を挙上し,胸郭腔が側方に拡大する呼吸様式です.女性(特に妊娠時)は胸式呼吸が優位になります.
評価
呼吸数
胸郭や鎖骨上窩の運動を観察します.脈拍に比べ不規則になるため,基本的には1分間の回数を測定します(15秒間の回数を4倍または30秒間の回数を2倍する方法もあります).
ココに注意
呼吸は随意的にコントロールできるため,対象者に意識されないことが必要です.また,深呼吸をすると正確な回数を測定することはできません.
リズム
呼吸は呼息(吐く)と吸息(吸う)からなります.正常な場合は呼息と吸息の間に休止期があります.各相に正常値はありませんが,目安として吸息:呼息:休息期=1:1.5:1の比率になります.
深さ(換気量)
呼吸の深さを観察することは困難です.1回の呼吸運動(1回換気量)で気道や肺に取り込む空気の量は約500mlです.1回換気量が増加した場合は呼吸が深くなり,減少した場合は呼吸が浅くなります.
ココがおすすめ
呼吸数やリズムの確認は,脈拍や血圧測定に比べ難しいです.その場合は呼吸状態を模倣するとスムーズに確認できる場合があります.
呼吸数
正常呼吸数は1分間に12-20回です.正常数よりも少ない場合を徐呼吸,多い場合を頻呼吸と言います.また,10秒以上呼吸がない場合を無呼吸と言います.
呼吸数,リズム,深さ(換気量)などの異常が合わさり異常呼吸になります.
まとめ
詳細な呼吸機能はスパイロメータなどで測定しますが,日々の臨床では頻繁に使用する機会は少ないと思います.対象者の状態を理解するために,呼吸観察は重要です.異常を把握するために,まずは正常な呼吸状態を理解しましょう.
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参考文献
・亀田メディカルセンター:リハビリテーションリスク管理ハンドブック 第4版.MEDICAL VIEW.
・能登真一ほか:標準作業療法学 専門分野 作業療法評価学 第3版.医学書院.
・中村隆一ほか:基礎運動学 第6版補訂.医師薬出版株式会社.
・松澤正ほか:理学療法評価学 改訂第6版.金原出版株式会社.
・塩谷隆信ほか:リハ実践テクニック 呼吸ケア.MEDICAL VIEW.