骨折の治癒過程
骨の再生能力は優れているため,骨折しても一定期間で元通りに修復されます.骨折して元通りになるかことを骨癒合といいます.
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骨癒合
骨癒合は炎症期→修復期→リモデリング期の経過をたどります.
炎症期
骨折直後は骨髄や骨膜などの血管から出血し血腫が形成されます.そして炎症反応が惹起されます.骨折端は壊死に陥り,壊死組織の吸収とともに骨髄内や滑膜周辺の軟部組織から毛細血管の新生が起こります.この時期は炎症を起こしているので疼痛があります.
修復期
炎症期で形成された血腫は肉芽細胞に置換されます.肉芽組織に骨塩基の沈着が起こり仮骨が形成されます.骨膜下に形成される仮骨(骨膜性仮骨)は直接骨形成します.これを膜性骨化といいます.
骨折間隙に生じた血腫内の肉芽細胞は軟骨を形成します.軟骨の中心部に血管が侵入して骨核を形成して仮骨が生じます.このような骨形成を内軟骨性仮骨といいます.
リモデリング期
破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を繰り返し,皮質骨と骨髄腔が形成されていきます.仮骨量の減少にともない強度が増します.再造形の完了には数ヶ月から数年を要します.
骨癒合期間
骨折部がある程度の運動に耐えられるには4-12週の期間が必要になります.また,骨折部位により癒合期間が異なります.1つの目安としてGurltによる骨折の平均癒合期間(最小期間)があります.
骨折部 | 期間 |
中手骨 | 2週 |
肋骨 | 3週 |
鎖骨 | 4週 |
前腕骨 | 5週 |
上腕骨骨幹部 | 6週 |
脛骨,上腕骨頸部 | 7週 |
両下腿骨 | 8週 |
大腿骨骨幹部 | 8週 |
大腿骨頸部 | 12週 |
骨癒合を阻害する因子
順調に骨癒合が進まない場合があります.
全身的因子 | 局所因子 |
低栄養
ビタミン不足 高齢 低タンパク症 内分泌疾患 |
感染
開放骨折 整復・固定不良 神経・血管の損傷 転位・骨欠損が大きい |
骨癒合を阻害する因子を取り除き骨癒合を促進する必要があります.全身・局所状態を管理することが骨折の治療には重要です.
遷延治癒と骨癒合不全
予測治癒期間を過ぎても骨癒合がみられないが,期間を要すれば骨癒合が望める場合を遷延治癒といいます.この場合は阻害因子を取り除けば骨癒合が進行します.
治癒していないにも関わらず骨癒合が停止した状態を骨癒合不全といいます.そして,骨折部と骨折部の間に関節液様の粘液性組織液が見られる場合を偽関節といいます(骨癒合不全をまとめて偽関節という場合もあります).
ココがポイント
遷延癒合と骨癒合不全を区分することは困難です.一般的には3-4ヶ月経過しても癒合しない場合を遷延癒合,6-8ヶ月経過しても癒合しない場合を骨癒合不全といいます.
参考文献
・井樋栄二ほか:標準整形外科学 第14版.医学書院.
・立花勝彦ほか:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 整形外科学 第4版.医学書院.