脊髄小脳変性症|理学療法士・作業療法士国家試験必修ポイント

脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)とは?

脊髄小脳変性症(SCD)は,小脳または脊髄の系統変性を主とした病変により運動失調を主症状とする疾患の総称です.約7割が孤発性で残りの3割が家族性です.SCDは遺伝子異常の有無と症候によって分類されます.

 

孤発性(非遺伝性)脊髄小脳変性症

非遺伝性脊髄小脳変性症は皮質性小脳萎縮と多系統萎縮症に分類されます.

孤発性脊髄小脳変性症(cortical cerebellar atrophy:CCA

皮質小脳萎縮症(CCA)は孤発性脊髄小脳変性症の約1/3を占めます.変性は小脳に限局されるため,パキンソンニズムや自律神経症状は出現しません.

 

多系統萎縮症(Multiple system atrophy:MSA

多系統萎縮症(MSA)は孤発性の2/3を占めます.小脳以外の大脳基底核や自律神経系にも変性がおよぶため症状は多彩です.小脳性運動失調を主体とするMSA-C,パーキンソンニズムを主体とするMSA-Pに分類されます.

特徴
MSA-C 小脳性運動失調で発症する.その後,自律神経症状,錐体外路症状,錐体路症状を伴う.MSAの約7割を占める.
MSA-P パーキンソン症状から発症する.自律神経症状を伴う.症状の左右差は少なく,構音障害が目立つ.MSAの約3割を占める.死因は誤嚥性肺炎などの感染症が多く,夜間の突然死もある.

ココに注意

以前は橋小脳を中心に障害されるオリーブ橋小脳萎縮症,大脳基底核系が障害される線条体黒質変性症,自律神経系が障害されるシャイ・ドレーガー症候群に分類されていました.現在は3疾患を区別せず多系統萎縮症という総称が使われています.

 

遺伝性脊髄小脳変性症

常染色体優性遺伝によるSCDは,SCA6SCA31(純粋小脳型)とSCA1SCA2SCA3(マシャド・ジョセフ病),SCA7,歯状赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(非純粋性小脳型)があります.また,常染色体劣性遺伝ではフリードライヒ失調症(非純粋小脳型),伴性劣性遺伝では遺伝性痙性対麻痺(非純粋小脳型)があります.

 

重症度分類

脊髄小脳変性症の重症度分類は厚生労働省運動失調症調査研究班により作成されています.

下肢機能障害

状態

(微度)

独歩歩行

独り歩きは可能.補助具や他人の介助を必要としない.

(軽度)

随時補助・介助歩行

独り歩きはできる.立ち上がり,方向転換,階段昇降などで,壁や手摺りなどの支持補助具,または他人の介助を必要とする.

(中等度)

常時補助・介助歩行―伝い歩行

歩行できるが,ほとんど杖や歩行器などの補助具,または他人の介助を必要とし,それらのないときは伝い歩きが主体をなす.

(重度)

歩行不能―車椅子移動

起立していられるが,他人に介助されてもほとんど歩行できない.移動は車椅子によるが,四つ這い,またはいざり這いで行う.

(極度)

臥床状態

支えられても起立不能で,臥床したままの状態.日常生活動作はすべて他人に依存する.

上肢機能障害

状態
発病前(健常時)に比べれば異常であるが,ごく軽い障害.
細かい動作は拙劣であるが食事にスプーンなどの補助具は必要としない.書字も可能であるが,明らかに下手である.
手先の動作は全般に拙劣で,スプーンなどの補助具を必要とする.書字はできるが読みにくい.
手先の動作は拙劣で,他人の介助を必要とする.書字は不能である.
手先のみならず上肢全体の動作が拙劣で,他人の介助を必要とする.

会話障害

状態
発病前(健常時)に比べれば異常であるが,軽い障害.
軽度障害されるが,十分に聞き取れる.
障害は軽いが少し聞き取りにくい.
かなり障害され聞き取りにくい.
高度に障害されほとんど聞き取れない.

注意:下肢機能障害,上肢機能障害,会話障害のうち障害度の最も重度なところを以って障害度とします.

ココがポイント

近年の国家試験では,重症度分類をもとに国家試験が作成されることがあります.重症度別にある程度の状態を把握する必要があります.

 

症状

小脳性運動失調が主症状になります.小脳症状以外では,眼球運動障害(眼振,緩徐眼球運動など),感覚障害,錐体路・錐体外路症状,自律神経障害,高次脳機能障害がみられます.

症状
小脳症状 運動失調が主症状.失調性歩行,上肢協調運動障害,動作時振戦,測定障害,失調性構音障害など
錐体路症状 痙縮,腱反射亢進,病的反射など
錐体外路症状 不随意運動,パーキンソン症状など
自律神経症状 起立性低血圧,膀胱直腸障害など

 

リハビリテーション

廃用予防,失調症状の軽減,ADL機能の維持に対して介入を実施します.そして,主体的な活動を支援しQOLの向上をはかります.

症状
初期 現状の活動の維持.予測される二次的障害の予防.
中期 二次的合併症の予防.自助具や家屋環境の調整.
後期 コミュニケーションの検討,介護・介助方法の指導.

初期(重症度分類),中期(重症度分類Ⅱ・Ⅲ),後期(重症度分類Ⅳ・Ⅴ

 

演習問題

多系統萎縮症(MSA)の症状で頻度が低い症状はどれか.

1.測定障害

2.腱反射低下

3.排尿障害

4.酩酊歩行

5.構音障害

解答・解説はクリック☝️

解答 2

錐体路症状が出現するため腱反射は亢進する.

 

脊髄小脳変性症(SCD)で誤っているはどれか.2つ選べ

1.発症は遺伝的要素の影響が高い.

2.運動失調を主症状とする.

3.MRIでは第4脳室の拡大が認められる.

4.UMSARASCDに対する特有の評価である.

5.多系統萎縮症では小脳症状以外は出現しない.

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解答 1・5

解説

1.SCDは孤発性が約7割を占める.

3.小脳が萎縮するため第4脳室は拡大する.

5.多系統萎縮症は種々の症状が出現する.

UMSARSUnified Multiple System Atrophy Rating Scale)はSCDに対する特異的な評価である.

 

65歳の男性.脊髄小脳変性症.訪問サービスを利用して在宅生活を送っている.重症度分類は下肢度(中等度),上肢度(中等度),会話障害度(軽度)である.作業療法士の対応で誤っているのはどれか.2つ選べ

1.握りやすいように太柄のスプーンを使用する.

2.筋萎縮防止のため筋力増強訓練を行う.

3.転倒しないように室内環境を整える.

4.コミュニケーションエイドを導入する.

5.歩行が不安定なため車椅子を使用する.

解答・解説はクリック☝️

解答 4・5

解説

4.会話障害は度(軽度)であり,十分に聞き取れる状況が考えられる.そのため,コミュニケーションエイドの導入は時期尚早である.

5.現状(下肢重症度)は介助歩行または伝い歩きが可能である.車椅子は可能な動作を制限するため導入は不適切である.

 

参考文献

・小林隆司:PT・OTビジュアルテキスト 身体障害作業療法学1 骨関節・神経疾患編 第1版.羊土社.

・能登真一ほか:標準作業療法学 専門分野 作業療法評価法 第3版.医学書院.

・石川朗ほか:15レクチャーシリーズ 神経障害理学療法学.中山書店.

 




-神経内科

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