筋萎縮性側索硬化症|理学療法士・作業療法士国家試験必修ポイント

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)とは?

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位運動ニューロン下位運動ニューロンが変性して脱落する原因不明の疾患です.筋力低下や筋萎縮がみられ,随意運動,コミュニケーション,呼吸,燕下が困難になります.発症から数年で呼吸機能の低下により呼吸器の装着が必要になります.約9割が孤発性で,残りが家族性になります.女性に比べ男性に好発する傾向です.

閉じ込め症候群

意識は保たれているが,随意運動(眼球運動以外)や言葉による意思表出ができない状態を閉じ込め症候群といいます.筋萎縮性側索硬化症の症状が進行するとこのような状態になります.

 

診断・重症度分類

特異的な診断はなく,神経症状と経過から診断されます.他の疾患と区別するためにMRI,血液・髄液検査,末梢神経伝導試験が実施されます.

重症度分類

厚生労働省によるALS重症度分類があります.

状態
1 家事はおおむね可能.
2 家事・就労は困難.日常生活(身の回りのこと)はおおむね自立.
3 自力で食事,排泄,移動のいずれか1つ以上ができず,日常生活に介助を要する.
4 呼吸困難・痰の喀出困難あるいは嚥下障害がある.
5 気管支切開,非経口的栄養摂取(経管栄養,中心静脈栄養等),人工吸気使用.

 

発症様式による分類

初期症状から3つに分類されます.

状態
上肢型 上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で,下肢は痙縮を示す.
下肢型 下肢から発症し,下肢の腱反射低下または消失が早期にみられ下位運動ニューロン障害が目立つ.
球型 構音障害,嚥下障害などの球麻痺症状が主体となる.球型の進行が最も速い.

 

症状

ALSは上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害が出現します.そして延髄に核を持つ舌咽神経,迷走神経,舌下神経が障害されると球麻痺症状が出現します.

上位運動ニューロン
脳神経領域 下顎反射亢進,口尖らせ反射亢進,偽性球麻痺,強制泣き・笑い
頸部・上肢領域 上肢腱反射亢進,ホフマン反射亢進,上肢痙縮,萎縮筋の腱反射残存
体幹領域 腹壁皮膚反射消失,体幹部腱反射亢進
腰部・下肢領域 下肢腱反射亢進,下肢痙縮,バビンスキー反射徴候,萎縮筋の腱反射残存
下位運動ニューロン
脳神経領域 顎,顔面,舌,咽頭,喉頭
頸部・上肢領域 頸部,上肢帯,上腕
体幹領域 胸腹部,背部
腰部・下肢領域 腰帯,大腿,下腿,足

陰性4徴候:感覚障害,眼球運動障害,膀胱直腸障害,褥瘡(感覚神経・自律神経は侵されにくい)

ココに注意

認知機能の低下は認められないとされていましたが,近年では前頭側頭葉型認知症に類似した症状を呈する場合もあると報告されています.

 

リハビリテーションプログラム

1.心身機能・日常生活活動を可能な限り維持・改善する.

2.社会参加を促し,患者と家族のQOLを維持・向上をはかる.

3.環境因子・個人因子を考慮しながら総合的に対応する.

 

演習問題

共通

筋萎縮性側索硬化症で誤っているのはどれか.2つ選べ

1.筋の線維束性攣縮が出現する.

2.舌の肥大が認められる.

3.上位運動ニュートンが障害される.

4.下位運動ニューロン障害は認められない.

5.感覚障害は出現しない.

解答・解説はクリック☝️

解答 2・4

解説

ALSは上位運動ニューロン障害,下位運動ニューロン障害,球麻痺症状が出現する.

2.球麻痺症状により舌は萎縮する.

4.下位運動ニューロン障害は出現する.

 

筋萎縮性側索硬化症で正しいのはどれか.2つ選べ

1.発症には遺伝的要素が強い.

2.女性に多い.

3.再発と寛解を繰り返す.

4.進行すると発語によるコミュニケーションが困難になる.

5.嚥下障害を呈する.

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解答 4・5

解説

1.9割は孤発性で,残りが家族性なる.

2.男女比は約1.5:1の割合で男性に多い.

3.ALSは進行性の疾患である.

 

作業療法専門

65歳の女性.筋萎縮性側索硬化症を発症し5年経過している.起居動作や食事動作は自立しているが,移乗や排泄時に介助を要する.現在は同居している夫の介助により在宅生活を送っている.訪問作業療法時に,夫から妻の声が聞き取りにくい,以前に比べ上肢に力が入らないなどの相談があった.

この対象者への支援で適切でないのはどれか.

1.ADLの再評価を実施する.

2.呼吸機能の評価を実施する.

3.上肢筋力増強訓練を指導する.

4.発話以外でのコミュニケーション方法を検討する.

5.夫に対象者の状況に応じた介助法を指導する.

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解答 3

解説

夫の相談内容から構音機能や筋力低下や筋萎縮が進行していると考えられる.そのため,現状の把握と今後の状態を予測した介入が重要になる.

3.上記の内容から積極的な筋力向上訓練により筋力増強は図れないと思われる.

 

60歳の女性.筋萎縮性側索硬化症を発症して1年が経過している.上肢に筋力低下(MMTで近位筋3,遠位筋3)と下肢に痙縮を認めるが,球麻痺症状はない.この対象者への食事動作への対応で適切でないはどれか.2つ選べ

1.BFOを使用する.

2.ミキサー食に変更する.

3.万能カフを用いる.

4.すくいやすい食器を使用する.

5.食事介助用ロボットを導入する.

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解答 2・5

解説

2.球麻痺症状は認められないため,嚥下障害はないと考えられる.そのため,ミキサー食にする必要性は低い.手指の巧緻性や筋力低下で常食を細かくできない場合は,刻み食を検討してもよい.

5.上肢筋力低下はあるが,万能カフやBFOを使用すれば食事は自立できるため,食事介助用ロボットは必要ない.

 

70歳の男性.筋萎縮性側索硬化症を10年前に発症している.非経口的栄養摂取,人工呼吸器を使用している.認知機能は問題なく意思疎通も可能である.この対象者が環境制御装置を操作する際に最も適している運動はどれか.

1.手指の運動

2.口唇の運動

3.吸気運動

4.舌の運動

5.眼球の運動

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解答 5

解説

文章から終末期であると考えられる.終末期は眼球運動で操作する方法が用いられる.

 

参考文献

・小林隆司:PT・OTビジュアルテキスト 身体障害作業療法学1 骨関節・神経疾患編 第1版.羊土社.

・川平和美:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 神経内科学 第版.医学書院.

・山口昇ほか:標準作業療法学 専門分野 身体機能作業療法学 第3版.医学書院.

・一般社団法人日本神経学会:筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013

・公益財団法人医学研究財団:難病情報センター.https://www.nanbyou.or.jp/entry/214

 




-神経内科

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