末梢神経は運動神経、感覚神経、自律神経の3つに分類されます。これらの神経が障害され機能が低下した状態を末梢神経障害といいます。末梢神経障害は外傷や絞扼などによって発生する整形外科的障害と感染や代謝障害などによって発生する内科的障害があります。ここでは整形外科的障害による末梢神経障害について解説します。
末梢神経損傷
整形外科的障害による末梢神経障害を末梢神経損傷(peripheral nerve injury)と呼ぶ場合もあります。内科的障害と区別しておきましょう!
末梢神経とは?
神経系は中枢神経系と末梢神経系に分類されます。末梢神経系は12対の脳神経と31対の脊髄神経からなります。末梢神経の構造を確認していきましょう。
神経細胞体から出る比較的長い突起を神経線維といいます。末梢神経はシュワン(Schuwann)細胞が軸索の周囲に巻きつき円筒状になっています。この部分を髄鞘といいます。
ココをチェック
髄鞘を形成する細胞は中枢神経と末梢神経では異なります。中枢神経では希突起膠細胞、末梢神経ではシュワン細胞が髄鞘の形成に関与します。
多数の神経線維は集まり束を神経周膜という結合組織で包まれます。神経周膜内の神経線維の間は神経内膜という結合組織で埋められています。神経周膜に包まれた複数の神経線維束は神経上膜という結合組織性被膜に覆われます。
Seddon分類
末梢神経損傷は損傷の程度により細かく分類されます.まず,Seddon分類を確認していきましょう.損傷の程度により3つに分類されます.
一過性神経伝導障害(neurapraxia)
器質的な障害はなし、または髄鞘に異常が認められ軸索には異常がない状態です。運動障害や感覚障害は数分から数週間で回復します。
ココをチェック
正座後の下肢のしびれや運動障害は一過性神経伝導障害です。
軸索断裂(axonotmesis)
軸索は断裂し、損傷部から遠位では軸索や髄鞘に変性(ワーラー変性)が認められる状態です。神経内膜の損傷がないため、損傷部(近位)から再生軸索が目的器官に1-3mm /日の速度で伸びるため自然回復します。
ワーラー変性
損傷部から遠位で生じる変性をワーラー(Waller)変性と呼びます。断端の遠位部からシュワン細胞やマクロファージによって軸索や髄鞘が貪食され除去されます。
神経断裂(neurotmesis)
末梢神経の全ての構造体の連続性が完全に絶たれた状態です。神経内膜まで損傷するため自然回復は期待できないため、神経縫合術や神経移植術などの外科的療法の対象になります。予後は不良で、過誤神経支配が生じる可能性があります。
過誤神経支配
再生軸索がもとの効果器(または受容器)につながらず、異なる効果器のシュワン管に入り不完全な回復に陥ることを過誤神経支配といいます。これにより病的共同運動がします。また、触覚受容線維と侵害受容線維が混線することによる知覚異常(軽く触れただけなのに強い疼痛を感じるなど)が発生します。
Sunderland分類
Sunderland分類はSeddon分類の軸索断裂を損傷程度によって3つに分類しています。
神経内膜、神経周膜の損傷の有無により軸索損傷をⅡ度からⅣ度に細分化しています。
末梢神経損傷の症状
運動障害
筋力低下、腱反射減弱または消失、筋萎縮など下位運動ニューロン障害症状が出現します。
感覚障害
異常知覚、感覚鈍麻、感覚脱失が出現します。
自律神経障害
血管運動障害、発汗障害、立毛不能、皮膚萎縮、易損性(褥瘡など)、指尖・爪の変化、骨萎縮が出現します。
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