体液
体液の構成
人間の身体には多くの水分(体液)が含まれます.その水分量は成人の場合は約60%といわれています.体内にある体液のうち3分の2(体重の約40%)は細胞内にあります.この細胞内の体液を細胞内液,それ以外(3分の1:体重の約20%)を細胞外液といいます.細胞外液は細胞間にある間質液(15%),血漿やリンパ管を流れる管内液(5%)などがあります.
体内には消化管内や脳脊髄液などにも水分はありますが,その量は少量です.
ちょいメモ
女性は男性に比べ脂肪量(脂肪細胞の水分含有量が少ない)が多いため,相対的に女性の方が水分量は少ないといわれています.また,新生児は体重に占める体液の割合は高く,加齢により割合は低下していきます.
細胞内液と細胞外液
体液はさまざまなイオンが含まれていますが,その組成は細胞内液と細胞外液では大きく異なります.細胞内液の主要な陽イオンはカリウムイオン(K+),細胞外液はナトリウムイオン(Na+)になります.そして,細胞内液の陰イオンはリン酸イオン(HPO42–)とタンパク質,細胞外液は塩化物イオン(Cl–)が大部分を占めます.
浸透圧
溶媒(物質を溶かしている液体)は通過するが,溶質(溶媒に溶けている物質)は通過させない膜を半透膜といいます.
容器を半透膜で隔てて2種類(濃度5%と10%)の溶液を入れます.すると水(溶媒)は濃度が高いほうへ移動します.この水が移動する力を浸透圧といいます.
浸透圧は溶液中にある溶質の量によって決まり,単位はOsm(オスモル)です.体内の浸透圧は非常に低いのでmOsm(ミリオスモル:Osmの1000分の1)を使います.細胞外液の浸透圧は275〜295mOsm/Lが正常値になります.
低張・高張・等張
浸透圧が低下することを低張,上昇することを高張といいます.細胞膜は半透膜であるため,水は細胞内と間質液の間を通過することができますが,Na+やK+などのイオンなどは通過することはできません.間質液の浸透圧が低張になる(イオン濃度が低い)と間質液から細胞内に水が流入します.間質液から細胞内に水が流入すると細胞は膨張(腫脹)します.逆に間質液の浸透圧が高張になる(イオン濃度が高い)と細胞内から間質液に水が吸い出されます.このように間質液のイオン濃度によって細胞内液の量は変化します.同様に間質液の量は血漿のイオン濃度によって変化します.
血漿の浸透圧は水分摂取や排泄量によって調整されます.
ちょいメモ
細胞外液の浸透圧は0.9%食塩水や5%グルコース液と等しい状態にあります.この状態を等張といいます.また,0.9%食塩水は生理食塩水とも呼ばれます.点滴など薬物を血液中に投与する場合は溶媒として生理食塩水を使用します.