新・徒手筋力検査法第10版徹底解説!|徒手筋力テストの原理編

新・徒手筋力検査法第10版が出版されました.約6年ぶりの改訂です.2020年度入学生から第10版で筋力検査を学習することになります.9版から10版へ変更内容を章ごとに確認したいと思います.ここでは第1章の徒手筋力テストの原理について変更点を解説します.

ちなみに表紙は大きく変更されています.

そして映像学習のためのツールがDVDからWeb動画へ変更されました.

こんな方におすすめ

  • 新・徒手筋力検査法を第10版以前で学習した人
  • 2020年度入学生以降の臨床実習を担当する人
  • MMTをアップデートしたい人

 

テスト手順の概要

9版では徒手抵抗の方法により,抑止テストと抗抵抗自動運動テストがありました.第10版ではそれらの名称が変更されています. さらに新たに抵抗の方法が1つ加わりました.

抑止テストからブレイクテスト(break test)へ

9版では抑止テストと呼ばれていましたが,第10版からはブレイクテスト(break test)に変更されています.抵抗は,対象者が四肢などを重力に抗して保持している状態の部位に,検査者が収縮する筋の方向とは逆の抵抗を加えます.名称の変更はありますが,抵抗の方法に変更はありません.

ちなみに

検査者は徒手的抵抗によって対象者の保持を打ち破ろう(break)とするのを,対象者に耐えるように指示します.そのためブレイクテストと呼ぶようです.

抗抵抗自動運動テストからアクティブレジスタンステスト(active resistance test)へ

こちらも名称の変更のみです.抵抗の方法に変更はありません.「テスト手技としては推奨されないが,治療エクササイズ技術としては効果的でありうる」と記載されています.エクササイズの要素は第9版にはない表現です.

メイクテスト(Make test)が新設

メイクテストはブレイクテストに代わる方法として登場しています.このテストは,対象者の力に対抗するが打ち負かさない程度(ブレイクしない程度)の抵抗を加える方法です.最大収縮が起こっている間に,検査者は抵抗を徐々に(約3秒以上かけて)加え,対象者が耐えられる最大のレベルに一致するまで強度を上げていきます.メイクテストはブレイクテストに比べ信頼性が低いため,ブレイクテストの方が推奨されています.

安定化(stabilization)が追加

正確な検査を実施するために,身体や身体各部位の安定化が重要であると記載されています.正確な段階づけを実施するために,検査肢位を適切に安定化させることの重要性が伺えます.各検査において具体的な安定化の方法が指示されています(今後の記事で解説します).

 

筋力テスト段階を定める基準

段階づけシステム

段階づけシステムに変更はありません.段階0から段階5まで6段階に区分されています.段階づけには数的スコア(0-5)と質的スコア(zerotraceNormal)があります.

言葉による段階づけ(質的スコア)は間違って示してしまう傾向があります.例えば段階4goodと評価されます.しかし,本来のgoodという言葉の意味が段階4の筋力を適切に表現していない可能性があります.そのため,第10版からは質的スコアをあまり推奨していません.

プラス(+)とマイナス(-)の段階づけ

9版では一部の検査(足部の底屈)にプラス(+)やマイナス(-)の表記がありました.Danielsらによる新・徒手筋力検査法ではプラス(+)やマイナス(-)の表記を推奨していません.第10版では段階2においては,重力を最小限化して水平面内での部分的な運動ができた場合に,段階2-とすることは受け入れられると記載されています.

ココがポイント

段階2と段階1の間には大きな機能的な差があります.そのため,マイナスのサインはわずかな機能回復の改善を評価する観点から重要ですね.

 

まとめ

徒手筋力のテスト原理について第9版と第10版で変更された点を紹介しました.2020年度入学生から第10版で学習するため,臨床教育者はMMTについてアップデートする必要があります.また,現場で評価する際も常に最新版を使用することをお勧めします.

 

参考文献

Dale Avers他:新・徒手筋力検査法第10版.協同医書出版社.

 




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