MFTとは…?
脳卒中上肢機能検査(Manual Function Test:MFT)は東北大学医学部リハビリテーション医学研究施設(鳴子分院)で開発されたテストです。検査は上肢の運動4項目、把持2項目、手指操作2項目からなり、32のサブテストで構成されています。
検査方法
患者に課題を実施させます。サブテストごとに課題を達成できない場合は0点(不可)、課題を達成できた場合は1点(可)を与えます。MFTは平均値ではなくパフォーマンスの最大値を測定するように設計されています。
上肢の動作
腕の運動空間を4種の上肢運動によって評価します。開始肢位は背もたれのない腰掛けに座り、両上肢は体側に垂らし足底は床に着くように設定します。
課題FE:上肢の前方挙上(forward elevation of the upper extremity)
指示内容:肘を伸ばしたままで患側の腕を前方へできるだけ高く上げてください。
判定基準
FE-1:肩屈曲は45°未満(肩関節屈曲運動が少しでも認めれば可)
FE-2:肩屈曲は45°以上-90°未満
FE-3:肩屈曲は90°以上-135°未満
FE-4:肩屈曲は135°以上
課題LE:上肢の側方挙上(lateral elevation of the upper extremity)
指示内容:肘を伸ばしたままで患側の腕を側方へできるだけ高く上げてください。
判定基準
LE-1:肩外転は45°未満(肩関節外転運動が少しでも認めれば可)
LE-2:肩外転は45°以上-90°未満
LE-3:肩外転は90°以上-135°未満
LE-4:肩外転は135°以上
課題PO:手掌で後頭部を触れる(touch the occiput with palm)
指示内容:患側の手掌で後頭部に触れて下さい。
判定基準
PO-1:患者の努力につれて、患側上肢がわずかに動くのが観察される。
PO-2:患側の手が胸骨剣結合のレベルよりも上にあがる。
PO-3:患側の手の一部分が後頭部あるいは側頭部に触れる。
PO-4:手掌はしっかりと後頭部に触れ、中手指節関節は正中部を越える。
課題PD:手掌部で背部を触れる(touch the dorsum with palm)
指示内容:患側の手掌でしっかりと背中に触れて下さい。
判定基準
PD-1:患者の努力につれて、患側肩がわずかに動くのが観察される。
PD-2:患側の指など、手の部分が同側の殿部に触れる。
PD-3:指先が背中の正中部に触れる。
PD-4:手掌はしっかりと背中に触れ、中手指節関節は正中部を超える。
把持
開始肢位は肩がわずかに屈曲位となり、肘が約90°となるように椅子あるいは机の高さを調整します。
課題GR:握る
指示内容:ボールを掴んで持ち上げて下さい。それから放し、落として下さい。
判定基準
GR-1:患者は介助されて、机上のボールを握る。自動的あるいは他動的に前腕を机から上げても、ボールを握った状態を保持できる。
GR-2:患者はボールを持ち上げた位置から、ボールを放して、机上に落とすことができる。
GR-3:患者は介助なしに机上のボールをつかんで、持ち上げることができる。
課題PI:つまむ
指示内容:机上にある鉛筆、コインあるいは針を拾い上げてください。
鉛筆をつまみ上げる
コインをつまみ上げる
針をつまみ上げる
判定基準
PI-1:鉛筆を拾い上げることができる。
PI-2:患者はコインを拾い上げることができる。
PI-3:患者は針を拾い上げることができる。
手指操
作開始肢位は肩がわずかに屈曲位となり、肘が約90°となるように椅子あるいは机の高さを調整します。
課題CC:立方体を運ぶ(carrying a cube)
指示内容:木製立方体8個をプラスティック製板の向こうまで運び、机上に置く。この動作をできるだけはやく、反復して行うように指示します。
判定基準:5秒間に移動を終了した立方体数で判定します。
CC-1:1-2個
CC-2:3-4個
CC-3:5-6個
CC-4:7-8個
課題PP:ペグボード(peg-board)
指示内容:ボードについている皿からペグを1本ずつとり、縦方向に並んだ孔にボードの先端(遠方)から順に立てていく。動作はできるだけはやく行うように指示します。
判定基準:30秒間に正確に立てられたペグ数で判定します。
PP-1:1-3本
PP-2:4-6本
PP-3:7-9本
PP-4:10-12本
PP-5:13-15本
PP-6:16本以上
スコア化
検査終了後に成功(1点)したテスト項目数を合計します(MFT-S)。MFT-Sの最大値は32です。MFT-Sに3.125を乗じた値を算出します(最大値は100)。これを上肢機能スコア(MFS)とします。
MFS標準回復プロフィール
MFT後に患者のMFSを求めそれを構成するサブテストの可能指数を項目ごとに標準回復プロフィールに記入します。記入例↓
記入したポイントが標準値の実線よりも低い項目は回復が遅れている機能です。作業療法訓練は標準値より低い項目の機能回復を主目的としたプログラムを行います。
動画資料
参考資料