脳卒中重症度スケールとは…?
脳卒中重症度スケール(Japan Stroke Scale;JSS)は、定量的脳卒中スケールとして日本脳卒中学会Stroke Scale委員会により1997年に発表されました。日本における臨床データを基に作成された指標で急性期での使用を目的としています。
使用方法
意識・言語・無視・視野または半盲・眼球運動・瞳孔・顔面麻痺・足底反射・感覚・運動の状態を、各項目の基準に沿ってA・B・Cの3段階に分類し、該当する項目にチェックを入れます。
A・B・Cは検査項目ごとに重み付けされスコア化されています。すべての項目にチェックを入れ終えたら、右側に示されているスコアの合計に-14.71を加えた数値を算出します。
評価項目
1.Level of Consciousness(意識)
意識の評価は原則としてGlasgow Coma Scale (GCS)を使用します。評価者が不慣れな場合など、やむを得ない場合はJapan Coma Scale (JCS)で代用してもかまいません。GCSの合計が15点の場合はA、7-14点はB、3-6点はCに分類します。
JCSを使用する場合は全く問題なしを9、Ⅰ-1を8と意識状態の低下に伴い点数を割り当てます。意識に問題がない場合はA、1桁または2桁はB、3桁はCに分類します。
GCSとJSCについてはこちら↓
2.Language(言語)
1.口頭命令で拳をつくる(両側麻痺の場合は口頭命令で開眼する)
2.時計を見せて“時計”と言える
3.“サクラ”を繰り返し言える
4.住所、家族の名前が上手く言える
4項目すべて実施できる場合はA、2つまたは3つ実施できる場合はB、1つまたはすべて実施できない場合はCに分類します。
3.Neglect(無視)
線分二等分試験を実施します。
線分二等分試験が正常な場合はA、線分二等分試験で半側空間無視がある場合はB、麻痺に気づかないあるいは一側の空間を無視した行動をする場合はCに分類します。
4.Visual Loss or Hemianopia(視野欠損または半盲)
視野検査を実施します。
同名性の視野欠損または半盲ない場合はA、同名性の視野欠損または半盲がある場合はBに分類します。
5.Gaze Palsy(眼球運動障害)
眼球運動を確認します。
眼球運動障害がない場合はA、側方視が自由にできない(不十分)場合はB、眼球は偏位したままで反対側へ側方視できない(完全共同偏視または正中固定)場合はCに分類します。
6.Pupillary Abnormality(瞳孔異常)
瞳孔を観察します。
瞳孔異常(対光反射 and/or 瞳孔の大きさの異常)ない場合はA、片側の瞳孔異常がある場合はB、両側の瞳孔異常ある場合はCに分類します。
7.Facial Palsy(顔面麻痺)
顔面の状態を観察します。
顔面麻痺がない場合はA、片側の鼻唇溝が浅い場合はB、安静時に口角が下垂している場合はCに分類します。
8.Plantar Reflex(足底反射)
足底反射を誘発します。
正常な場合はA、いずれとも言えない場合はB、病的反射(BabinskiまたはChaddock)陽性(1回でも認めたら陽性)の場合はCに分類します。
9.Sensory System(感覚系)
感覚検査を実施します。
正常(感覚障害がない)な場合はA、何らかの軽い感覚障害がある場合はB、はっきりした感覚障害がある場合はCに分類します。
10.Motor System(運動系)(臥位で検査する)
運動は手・腕・下肢の動作を確認します。
①手(Hand)
1.正常
2.親指と小指で輪を作る
3.そばに置いたコップが持てない
4.指は動くが物をつかめない
5.全く動かない
②腕(Arm)
1.正常
2.肘を伸ばしたまま腕を挙上できる
3.肘を屈曲すれば挙上できる
4.腕はある程度動くが持ち上げられない
5.全く動かない
③下肢(Leg)
1.正常
2.膝を伸ばしたまま下肢を挙上できる
3.自力で膝立てが可能
4.下肢は動くが膝立てはできない
5.全く動かない
1の場合はA、2または3の場合はB、4または5の場合はC分類します。
スコア化
チェックの入った枠の右側に示されている数字を合計して、その値に-14.71を加えます。
これらの計算で得られた数値が重症度スコアです。このスコアは④-0.38から26.95の間の値になります。カットオフ値などは設けられていませんが、数値が高いほど重症度が高いことを示しています。
脳卒中重症度スコア計算用紙は日本脳卒中学会のHPからDLできます。詳細はこちら
動画資料
参考・引用文献
日本脳卒中学会:脳卒中重症度スケール(急性期)