血圧とは?
血圧(blood pressure;BP)は体内を流れる血液が血管に与える圧力です.
収縮期血圧(systolic blood pressure;SBP) | 拡張期血圧(diastolic blood pressure;DBP) |
心臓が収縮したときに動脈壁にかかる圧力 | 心臓が拡張してときに動脈壁にかかる圧力 |
血管内の血液量が多くなるため収縮期の血圧は高くなり(血管への圧力が高まる),逆に血管内の血液量が少なくなるため拡張期の血圧は低くなります(血管への圧力が低くなる).
血圧測定には動脈内に針を挿入して測定する直接法と,体表から測定する間接法あります.臨床で一般的に使われるのは間接法です.
血圧計
医療・福祉の現場で使用されている血圧計です.血圧計各部の名称は覚えておきましょう.
以前は水銀血圧計が主流でしたが,2013年に「水銀に関する水俣条約」が採決されました.それに伴い水銀を用いた体温計や血圧計の製造・輸入が不可能となります(2021年1月から).そのため現在は水銀レス血圧計が主流になっています.
血圧の単位
血圧の単位はmmHgです.これは長さを表すmm(ミリメートル)と水銀の元素記号のHgの組み合わせです.
例えば100mmHgは水銀(Hg)を100mm持ち上げる圧力であることを意味します.水銀(Hg)の比重は常温で13.5(水の13.5倍)なので100mmHgは水を1350mmの高さに上げる圧力と等しいことになります.
豆知識
血液の比重は水とほとんど変わらないので,100mmHgの血圧は血液を1350mmの高さまで噴き上げる力になります…恐ろしいですね.
測定方法
聴診法
マンシェットを上腕に巻く(下縁が肘窩の上方2-3cm)
聴診器をマンシェットの下縁で上腕動脈の触れる位置に当てる.
ゴム球を押してマンシェットを膨らませ加圧する(聴診音が聞こえなくなるまで).
バルブを下げマンシェットの空気を抜く(脈拍ごとに2-3mmHgの割合).
減圧後に最初に聞こえる聴診音(スワンの第1点)が収縮期血圧,聴診音が聞こえなくなる点(スワンの第5点)が拡張期血圧です.
ココに注意
チェストピースをマンシェットの中に入れると正確な数値が取れない場合があるので注意しましょう.
触診法
聴診法と手順はほとんど同じです.橈骨動脈に触れた状態で加圧して,脈が触れなくなったら減圧していきます.
減圧後に最初に橈骨動脈を触れた点が収縮期血圧です.拡張期血圧は確認することは困難です.
血圧の評価
測定値の分類
日本高血圧学会による高血圧治療ガイドをもとに作表しています.正常血圧,高血圧ともに3段階に細かく分類されます.
ココに注意
収縮期血圧と拡張期血圧が異なる分類に属する場合は高いほうの分類に組み入れます.
測定結果の記載方法
測定値は収縮期血圧・拡張期血圧の順に記載します.脈拍と合わせて記載されることもあります.
例)BP125/85 P65(収縮期血圧125mmHg 拡張期血圧85mmHg 脈拍1分間に65回を示しています)
運動療法実施の基準
血圧は活動の中止・中断基準に用いられます.ここではリハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドラインに基づいた基準を示します.
運動負荷を伴う訓練を実施する基準
・安静時収縮期血圧70mmHg以下または200mmHg以上
・安静時拡張期血圧120mmHg以上
途中でリハビリテーションを中止する場合
・運動時収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧が20mmHg以上上昇した場合
その他
脈圧
脈圧とは収縮期血圧値から拡張期血圧値を引いた値です.例えば収縮期血圧が120mmHgで拡張期血圧が80mmHgの人であれば脈圧は40mmHgになります.
正常値の上限は45mmHgです.脈圧は動脈硬化(大血管)と心拍出量異常に関係があります.
平均血圧
平均血圧は(収縮期血圧―拡張期血圧)÷3+拡張期血圧で求めることができます.正常値は90mmHg未満です,90mmHgを超えている場合は動脈硬化(末梢血管)が疑われます.
参考文献
・奈良勲他:標準理学療法・作業療法 専門基礎分野 生理学 第5版.医学書院.
・能登真一ほか:標準作業療法学 専門分野 作業療法評価学第3版.医学書院.
・潮見泰藏ほか:PT・OTビジュアルテキスト リハビリテーション基礎評価学第1版.羊土社.
・亀田メディカルセンター:リハビリテーションリスク管理 ハンドブック第4版.MEDICAL VIEW.
・松澤正ほか:理学療法評価学 改訂第6版.金原出版株式会社.