筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症に関する第50回以降の国家試験問題を詳しく解説しています!類似している問題が多くあるので解説をじっくり読みながら理解してください。
PT・OT共通
第50回 午後93
筋萎縮性側索硬化症にみられるのはどれか。
1.筋固縮
2.痛覚脱失
3.測定異常
4.線維束性攣縮
5.筋の仮性肥大
+ 解説
解答:4
解説
1・2・3.ALSで生じる変性は運動ニューロンと一部の脳神経(Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅻ)が主です。そのため、原則として感覚・自律神経、小脳、錐体外路の障害は起こりません。
5.仮性肥大はデュシェンヌ型筋ジストロフィーやベッカー型筋ジストロフィーで生じます。
第59回 午後91
筋萎縮性側索硬化症における典型的な筋電図検査所見で正しいのはどれか。
1.運動神経伝導検査における遠位潜時延長
2.感覚神経伝導検査における伝導ブロック
3.針筋電図検査における線維束攣縮の電位出現
4.反復刺激試験における漸減現象〈waning〉
5.反復刺激試験における漸増現象〈waxing〉
+ 解説
解答:3
解説
筋電図所見は①安静時に脱神経電位・線維束電位、②随意収縮時に高振幅・長持続で干渉が不十分な波形がみられます。
1.潜時延長はギラン・バレー症候群などの脱髄疾患でみられます。
2.ALSで生じる変性は運動ニューロンと一部の脳神経(Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅻ)が主です。そのため、原則として感覚・自律神経、小脳、錐体外路の障害は起こりません。
4.反復刺激試験における漸減現象〈waning〉は重症筋無力症でみられます。
5.反復刺激試験における漸増現象〈waxing〉はLambert-Eaton(ランバート・イートン)症候群でみられます。
PT専門
第50回 午前27
球麻痺からの発症した筋萎縮性側索硬化症で歩行が可能な患者への対応で正しいのはどれか。
1.胸郭のストレッチを指導する。
2.呼吸機能評価を1年に1回行う。
3.栄養指導は誤嚥を認めてから行う。
4.早期からプラスチック短下肢装具を導入する。
5.鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングを指導する。
+ 解説
解答:1
解説
1.ALSは呼吸筋機能の低下を呈するため、胸郭のストレッチによって残存機能を効率的に用いることができます。
2.ALSは進行性の疾患であるため1年に1回の評価では少なすぎます。
3.球麻痺(嚥下障害・構音障害)があるため、嚥下障害を認める前(早期)から栄養指導や嚥下訓練を行う必要があります。
4.現在、歩行が可能であるため短下肢装具を導入する必要はありません。
5.鉄アレイを使用することで高負荷による筋疲労を起こす可能性があります。ALSでは自動運動などで筋力維持を主体とした介入を行います。
第51回 午前15
45歳の男性。筋萎縮性創作硬化症。発症から1年経過している。ADLは自立しているが、主に下肢の筋力低下、バランス不良および鶏歩が認められる。理学療法で適切なのはどれか。
1.車椅子操作の練習
2.下肢の漸増抵抗運動
3.両松葉杖での歩行練習
4.感覚再教育によるバランス練習
5.プラスチックAFOを装着した歩行練習
+ 解説
解答:5
解説
1・3.ADLは自立しているため車椅子や松葉杖は必要ありません。
4.ALSで生じる変性は運動ニューロンと一部の脳神経(Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅻ)が主です。そのため、原則として感覚・自律神経、小脳、錐体外路の障害は起こりません。
5.AFOを装着(足関節背屈補助)することで鶏歩の改善が可能になります。
第52回 午後34
筋萎縮性側索硬化症で生じにくい症状はどれか。
1.舌萎縮
2.構音障害
3.上下肢麻痺
4.眼球運動障害
5.摂食嚥下障害
+ 解説
解答:4
解説
ALSで生じる変性は運動ニューロンと一部の脳神経(Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅻ)が主です。そのため、原則として感覚・自律神経、小脳、錐体外路の障害は起こりません。①眼球運動障害なし、②感覚障害なし、③膀胱直腸障害なし、④褥瘡なしの四大陰性徴候が特徴です。
第53回 午後10
45歳の男性。半年前から左上肢遠位部の脱力、3ヶ月前から左上肢の筋萎縮と右上肢の脱力、さらに最近歩行障害と構音障害を認めるようになり、神経内科で筋萎縮性側索硬化症と診断された。現時点で認められる可能性が高いのはどれか。
1.褥瘡
2.振動低下
3.眼球運動障害
4.膀胱直腸障害
5.Hoffmann反射陽性
+ 解説
解答:5
解説
1・3・4.ASLは①眼球運動障害なし、②感覚障害なし、③膀胱直腸障害なし、④褥瘡なしの四大陰性徴候が特徴です。
2.ALSで生じる変性は運動ニューロンと一部の脳神経(Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅻ)が主です。そのため、原則として感覚・自律神経、小脳、錐体外路の障害は起こりません。
5.上位運動ニューロン障害で病的反射(バビンスキー反射・ホフマン反射など)が陽性になります。
第55回 午前35
筋萎縮性側索硬化症で下位運動ニューロン障害の徴候はどれか。
1.痙縮
2.仮性球麻痺
3.線維束性収縮
4.腹壁反射消失
5.アキレス腱反射亢進
+ 解説
解答:3
解説
1・2・5.痙縮・仮性球麻痺・アキレス腱反射亢進は上位運動ニューロン障害です。
4.腹壁反射が一側で減弱ないし消失している場合は錐体路障害の疑い
OT専門
第52回 午後11
57歳の男性。筋萎縮性側索硬化症と診断されて3年が経過。四肢や体幹に運動麻痺を生じてベッド上の生活となりADLは全介助。さらに球麻痺を認め、安静時も呼吸困難を自覚する。この患者がコミュニケーション機器を使用する際の入力手段として適切なのはどれか。
1.舌
2.手指
3.口唇
4.呼気
5.外眼筋
+ 解説
解答:5
解説
ALSは眼球運動障害が生じにくい(四大陰性徴候)ため、透明文字板を用いたコミュニケーションや視線を利用して環境制御装置の操作が可能です。
第53回 午前13
55歳の男性。2年前に筋萎縮性側索硬化症と診断された。2ヶ月前に誤嚥性肺炎を起こして入院した。肺炎改善後、胃瘻が造設された。構音障害が重度で、発音は母音のみ可能、発声持続時間は8秒。湿性嗄声はない。唾液の空嚥下は可能である。上肢の筋力はMMTで4レベルであるが、体幹および下肢の筋力は3。歩行のFIMは1、移乗のFIMは6及びトイレ動作のFIMは6であった。自宅退院を計画している。この患者に対する対応で正しいのはどれか。
1.食事を常食で再開する。
2.エアマットの使用を勧める。
3.透明文字盤の使用を勧める。
4.ポータブルトイレの使用を勧める。
5.チンコントロール電動車椅子を導入する。
+ 解説
解答:4
解説
1.誤嚥性肺炎を起こしていることから嚥下障害の可能性があります。そのため、常食で食事を再開するのは適切ではありません。
2.エアマットは褥瘡予防に用いられます。ALSは褥瘡が生じにくい(四大陰性徴候)ためエアマットを勧める必要はありません。
3.透明文字盤は症状が進行して眼球運動のみ行える場合に利用するコミュニケーションツールです。この患者は上肢の運動が可能であるため透明文字盤を使用する必要はありません。
4.この患者のトイレ動作は修正自立(FIM6)であるため、ポータブルトイレを導入することで自立する可能性があります。
5.チンコントロール式電動車椅子は顎の運動で車椅子を操作します。この患者は上肢の運動が可能であるためチンコントロール式電動車椅子を使用する必要はありません。
第53回 午後29
筋萎縮性側索硬化症について正しいのはどれか。
1.感覚障害が出現する。
2.筋の線維束攣縮はない。
3.針筋電図で多相波は出ない。
4.脊髄前角細胞の障害はない。
5.上位運動ニューロンは障害される。
+ 解説
解答:5
解説
ALSで生じる変性は運動ニューロンと一部の脳神経(Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅻ)が主です。そのため、原則として感覚・自律神経、小脳、錐体外路の障害は起こりません。
1.ALSに感覚障害は生じません(四大陰性徴候)。
2.線維束性攣縮は下位運動ニューロン障害でみられます。
3.筋電図で多相波がみられます。
4.ALSは脊髄前角細胞の変性と脱落がみられます。
第57回 午前11
57歳の男性。筋萎縮性側索硬化症。発症後5年が経過。四肢と体幹に重度の運動麻痺を生じてベッド上の生活となり、ADLは全介助。球麻痺症状を認め、安静時も呼吸困難を自覚している。この患者がコミュニケーション機器を使用する際の入力手段として適切なのはどれか。
1.舌
2.口唇
3.呼気
4.手指
5.外眼筋
+ 解説
解答:5
解説
ALSは①眼球運動障害なし、②感覚障害なし、③膀胱直腸障害なし、④褥瘡なしの四大陰性徴候が特徴です。
1.球麻痺症状が出現しているため、舌運動障が予測されるため適切ではありません。
3.安静時に呼吸困難を自覚しているため適切ではありません。
4.四肢に重度の運動麻痺が生じているため適切ではありません。
5.眼球運動や眼瞼運動は終末期でも比較的保たれることが多いためコミュニケーション手段として適しています。