多発性硬化症とは?
多発性硬化症は中枢神経(大脳,小脳,間脳,脳幹,脊髄)と視神経に炎症性の脱髄が多発することより発生します。
脱髄とは?
髄鞘が変性・脱落することです(白質に病変が生じる)。そのため跳躍伝導が不十分になり神経伝達速度が遅くなります。そして、多彩な神経症状が生じます。
中枢神経系のさまざまな部分に脱髄が発生し(空間的多発性)、寛解と増悪を繰り返します(時間的多発性)。高緯度地域、白色人種の有病率が高い傾向にあります。また、男女比=1:2-3で女性に多く、20-40歳くらいの多いと報告されています。
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症状
特異的な初発症状はありません。視力障害、感覚障害、運動障害で初発することが多いといわれています。脱髄が生じる部位により障害像は異なります。
病変症状
病変 | 症状 |
視神経病変 | 視野欠損(中心暗転)、視力低下、複視など 球後視神経炎で初発することが多い。 |
脊髄病変 | 運動麻痺(対麻痺が多い)、感覚障害、膀胱直腸障害など |
小脳・脳幹症状 | 運動失調、振戦(運動時)、構音障害、三叉神経痛、顔面神経麻痺など |
大脳病変 | 運動麻痺、感覚障害、高次脳機能障害(記憶障害、注意障害,遂行機能障害)など |
特異的症状
徴候 | 症状 |
ウートフ徴候 | 温度(体温)の上昇により一過性に症状が悪化する |
レルミット徴候 | 頸部に屈曲により背部から下肢に疼痛が出現する(頸髄後索病変で陽性) |
有痛性強直性痙攣 | 足を屈曲するなどの刺激によりテタニー様痙攣を伴う四肢の放散痛が出現する |
病型
再発と寛解を繰り返す再発寛解型、発症当初は再発と寛解があったが途中から寛解がなく症状が持続的に増悪する二次進行型、明らかな寛解を示さず持続的に症状が悪化する一次進行型に分類されます。
治療
急性期治療
治療 | |
ステロイドパルス療法 | メチルプレドニゾロンを静注。急性期では第一選択 |
血漿浄化療法 | ステロイドパルス療法の効果が乏しい、副作用がある場合に選択 |
進行抑制・再発予防
治療 | |
ベースライン薬 | インターフェロンβ グラチラマー酢酸塩 |
免疫抑制薬 | ナタリズマブ(静注) フィンゴリモド(経口薬) |
対症療法
痙縮や排尿障害など様々な症状に応じて薬物療法などが行われます。
リハプログラム
脱髄が生じる部位により障害像が異なるため、障害像に応じた介入を実施することが基本になります。寛解期や維持期には疲労に注意しながら、廃用防止のために必要に応じた活動(適度な運動)を実施します。
疲労・過労(易疲労性への指導)
高負荷、長時間の活動は過用性筋力低下や過用性筋損傷を呈する可能性があります。疲労を避けるために、課題の単純化や道具の軽量化などのエネルギー節約のための動作指導が重要になります。また、活動中に適切に休憩を取れるように配慮する必要があります。
温度管理
温度が高くなると伝導速度の遅延や伝導ブロックが生じる(Uhthoff徴候)。そのため、室温の調整や衣服の調整などにより著しい体温の上昇を避けるように配慮をすることが必要です。また、温熱療法は禁忌です。
視力障害への対応
視覚障害のため視認性の高い環境設定をする必要があります。また、細かなものを見る必要がある活動は視覚に負荷をかけるため避ける必要があります(視覚への負担を避ける)。
感染症予防
ウイルス感染などにより症状が再発する可能性があります。そのため、感染予防対策をする必要があります。
ココがポイント
疲労やストレスも再発の原因になります。疲労・ストレスを溜めないことが重要です。また、食事制限はないのでバランスの良い食生活も重要になります。
動画資料
参考文献
・多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン(日本精神神経学会)2017