呼吸器疾患に対する理学療法・作業療法の重要性は増しています.しっかりと対応するためには適切に評価結果を理解する必要があります.ここでは呼吸器検査について解説します.
自覚症状と他覚症状
自覚症状
症状 | |
喀痰 | 咳によって気道から喀出されたもの. |
咳嗽(がいそう) | 咳.喀痰を伴う湿性咳嗽,伴わない乾性咳嗽に分類される. |
喘鳴(ぜんめい) | 聴診器を使わなくても聞こえる呼吸音.(ゼイゼイ,ヒューヒューなど) |
他覚症状
チアノーゼ,バチ指など.
ココがポイント
対象者の観察をしっかり行うことが重要です!
呼吸困難評価
呼吸困難を評価するスケールはさまざまなものがあります.ここでは,使用頻度の高いスケールを紹介します.
mMRC(modified British Medical Research Council)息切れスケール
評価者が対象者の状態から判断するスケール(間接的評価)で広く使用されています.
Grade | 症状 |
0 | 激しい運動をしたときのみに息切れがある |
1 | 平坦な道を早足で歩く,あるいは緩やかな登り坂を歩くときに息切れがある |
2 | 息切れがあるので,同年代の人より平坦な道を歩くのが遅い.あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき,息切れのため立ち止まることがある |
3 | 平坦な道を約100m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる |
4 | 息切れがひどく家から出られない.あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある |
修正版ボルグ(Borg)スケール
対象者が感じている息苦しさの訴えから判断するスケールです(直接的評価).
スケール | 自覚度 |
0 | 感じない (nothing at all) |
0.5 | 非常に弱い (very very weak) |
1 | やや弱い (very weak) |
2 | 弱い (very weak) |
3 | |
4 | 多少強い (some what strong) |
5 | 強い (strong) |
6 | |
7 | とても強い (very strong) |
8 | |
9 | |
10 | 非常に強い (very very strong) |
ココがおすすめ
原法は運動強度,修正版は息切れや痛みの評価に向いています.
その他
Hugh-Jonesの分類,visual analog scale,numerical rating scale,Baseline Dyspnea Index,Transition Dyspnea Indexなどがあります.
肺機能検査
スパイログラム
まず,基本的な4分画(volume)を覚えましょう.国家試験では必須です!
volume | |
1回換気量(TV) | 1回の呼吸で肺に出入りする気量.安静呼吸時の空気の出入り.(500mL) |
予備吸気量(IRV) | 安静吸気後にさらに吸気できる気量.(2000mL) |
予備呼気量(ERV) | 安静呼気後にさらに呼気できる気量.(1000mL) |
残気量(RV) | 最大に呼出した後に肺内に残存する気量(1500mL) |
さらに,この4分画を組み合わせて気量を表します(capacity).
capacity | |
肺活量(VC) | 予備吸気量+1回換気量+予備呼気量 |
最大吸気量(IC) | 予備吸気量+1回換気量 |
機能的残気量(FRC) | 予備呼気量+1回換気量 |
全肺活量(TLC) | 予備吸気量+1回換気量+予備呼気量+残気量 |
ココに注意
肺気量は性別や年齢により異なります.記載している気量は目安です.また,スパイロメータでは残気量は測定できません.そのため機能的残気量や全肺活量の値も求めることはできません.
FEV曲線(forced expiratory volume)
努力性呼出曲線(FEV曲線)は最大吸気位から最大呼気位まで努力呼出した時の呼出量と呼出時間の関係をグラフにしたものです.
①は最大限に吸い込み,②吐き出し(一気に)を示しています.
ココが重要
呼出後1秒間に吐き出した気量を1秒量といいます.努力性肺活量(FVC)に対する1秒量の比率を1秒率といいます.70%以上が基準値です.
フローボリューム曲線
FEV曲線の縦軸に呼出流速,横軸に呼出量にプロットしたものがフローボリューム曲線です.
描かれる曲線から呼吸疾患の判断(疾患の鑑別)をすることが可能です.
まとめ
肺機能検査は国家試験でも頻出問題です.また,肺機能検査が理解できていないと呼吸器疾患も理解することはできません.まずはこの記事でしっかり肺機能検査を学習して下さい.
参考文献
・中村健ほか:息切れの評価法.日本リハビリテーション医学会.2017;54:941-966,2017.
・前田眞治ほか:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 内科学 第3版.医学書院.
・松澤正ほか:理学療法評価学 改訂第6版.金原出版株式会社.
・能登真一ほか:標準作業療法学 専門分野 作業療法評価学 第3版.医学書院.
・小林隆司:PT・OTビジュアルテキスト 身体障害作業療法2 内部疾患編 第1版.羊土社.
・岡田隆夫ほか:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 生理学 第5版.医学書院.