糖尿病に対する治療は,薬物療法(経口血糖降下薬,インスリン療法),食指療法,運動療法の3本柱です.国家試験(専門)に出題される多くの問題は治療に関する分野です.
運動療法
効果
効果 | |
急性効果 | 血糖値を下げる(ブドウ糖,脂肪酸の利用により). |
慢性効果 | インスリン抵抗性の改善,筋量維持・増大,内臓脂肪減少 |
上記のような数値の改善のほかにストレス解消効果もあります.
種類
運動療法は無酸素運動と有酸素運動に分類されます.糖尿病に対する運動療法は有酸素運動が推奨されています.
ココがポイント
無酸素運動は持続が困難なため,有酸素運動をある程度続けた方がエネルギー消費量が多くなります.また,有酸素運動は体内の糖質と脂質をエネルギーとして活用するため,脂質代謝改善,インスリン抵抗性を引き起こす内臓脂肪の減少に役立ちます.
ウォーキング,ジョギングや水泳などを指導することが多いと思います.また,レジスタンス運動を併用することが望ましいとされています.空腹時は避け,血糖値が高くなる食後1時間ごろに実施すると効果的です.
強度と頻度
運動強度は中等度(最大酸素摂取量50%:ややきつい程度)の有酸素運動が推奨されています.運動頻度は3-5回/週,20-60分/回(週150分以上)が推奨されています.そして2-3回/週のレジスタンス運動と併用すること運動療法の効果が上がります.
運動療法禁止
・血糖コントロール不良(空腹時250mg/dL以上,尿中ケトン体中等度以上陽性)
・増殖網膜症(失明の危険性あり)
・腎不全(透析者は運動耐容能の低下あり)
・虚血性心疾患や心肺機能障害
・糖尿病壊疽
・高度の糖尿病性自律神経症
・急性感染症
上記の場合は運動療法は禁忌です.
薬物療法
経口血糖下降薬
インスリン非依存型は食事療法・運動療法を実施しても血糖コントロールが得られない場合は,血糖下降薬の適応となります.(インスリン治療の適応がある場合は,下降薬による治療は禁忌)
インスリン治療
1型糖尿病,糖尿病性昏睡,糖尿病合併妊娠,外科手術時では絶対適応です.2型の場合は食事療法,運動療法,経口血糖下降薬によるコントロールができない場合に適応となります.
食事療法
糖尿病に対する食事は,適正なエネルギー摂取,バランスの取れた食品構成が重要になります.また,制限される項目があるので把握する必要があります.
制限 | |
塩分 | 血圧を上昇を避けるために塩分は控える.血圧が上昇すると腎臓への負担がかかり,動脈硬化を助長. |
間食 | 血糖のコントロール不良,体重増加を招く.全てを禁止するとストレスが増すため,検討が必要. |
アルコール | 血糖コントロールが良好で合併症がなければ摂取可(適度).飲酒により食事量が増える可能性があるため注意が必要. |
糖質制限
GI値は食後の血糖値上昇を示す値です.そのため,糖尿病の人はGI値の低い食品の摂取を心がける方が良いです.また,近年はGL値が注目されています.GL値は食品に含まれる糖質の量にGI値をかけて100で割った値です.少しややこしいですが,GI値は血糖値に注目をした値で,GL値は血糖値と糖質量に注目した値です.
身長や活動量の違いによりエネルギー摂取の目安は対象者により異なります.また,制限される項目も対象者によって異なるので確認する必要があります.
攻略ポイント
参考文献
・小林隆司:PT・OTビジュアルテキスト 身体障害作業療法学2 内部疾患編 第1版.羊土社.
・山口昇ほか:標準作業療法学 専門分野 身体機能作業療法学 第3版.医学書院.
・吉田雅春ほか:標準理学療法学 専門分野 運動療法学 各論 第4版.医学書院.
・内山靖ほか:リハベーシック 生化学・栄養学.医師薬出版株式会社.