実習対策講座|COPM(Canadian Occupational Performance Measure)

Canadian Occupational Performance MeasureCOPM

COPMとは?

カナダ作業療法士協会が開発した対象者中心の作業療法を実践するための評価尺度です.作業遂行(作業をどのように実施するか)の問題を半構造化面接によって探索し,各問題についての重要度,遂行度,満足度を10件法で点数化します.

作業療法士は「作業」に焦点を当てて介入を実施します.作業療法士にとって「作業」という言葉は馴染みがあるのですが,作業療法士以外の方にとっては馴染みがなく困惑することが多いと思います.

日本作業療法士協会は「作業」を

対象者となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す(2018526日 定時社員総会にて承認)

と定義しています.私は人が行う生活行為全てが「作業」であると解釈しています.

私見ですが…

作業療法士は,対象者や他職種に「作業」の定義を明確に提示しなければなりません.またまだ作業療法の理解は進んでいません.円滑に作業療法を実施するためには避けては通れません!

 

COPMで測定できること

さまざまな障害,すべての発達段階のクライエントを対象に,作業遂行に対する本人の捉え方の変化を測定することができます.

作業遂行の問題を探索

作業の順位化(優先順位をつける)

作業遂行の遂行と満足度の点数化

Client(クライエント)

COPMをはじめ作業療法に関連する書籍では「クライエント」という言葉が使用されることがあります.作業療法サービスによって利益を得る人がクライエントです.COPM関連の書籍では作業療法の対象者をクライエントと表記しているので,本記事でもクライエントとします.

作業療法開始時に実施することで,作業療法士はクライエントの作業遂行に対する考え方や領域を知ることができます.それによりクライエントと協働して目標設定や作業療法プログラムを作成することができます.また,介入中や介入後にCOPMを実施することで遂行度や満足度の時系列変化を指標にして,介入効果の判定も可能になります.

 

COPMの実施手順

COPM4つの段階に分かれています.

1段階:問題の決定

作業療法の導入面接時に実施します.クライエントが日常生活の中で,「したいこと」,「困っていること」,「必要なこと」,「できること」などを確認しながらクライエントにとって重要な作業を探索していきます.クライエントが重要な作業を認知していればスムーズに進みますが,認知していないクライエントも多くいます.その場合は面接技能を駆使してクライエントの重要な作業を探索する必要があります.

ココがポイント

クライエントから「手が痛い」,「お金が必要」など作業ではない(?)回答もあります.そのような場合は具体的に作業に焦点化するように会話を進め,クライエントにとって重要な作業を探索しましょう.

 

2段階:重要度の評定

段階1で決まった作業に対して,重要度を決定します.

1-10までの数字が記載されているカードをクライエントに提示して,第1段階で挙げられた作業について1つずつ点数(数字が大きいほど重要度が高い)をつけていきます.

それによりクライエントの作業に対する優先順位が決定します.

 

3段階:採点

2段階での優先度を参考にしながら作業を5つ以内に整理します.5つ以上の作業を挙げても同時に介入することは困難です.

ココに注意

必ずしも重要度の高い作業から5つを選択する必要はありません.簡単に解決できる,作業療法を実施するために必要であるなどを考慮して作業を選択することも可能です.クライエントと協働しながら進めることが重要です.

次いで選択した作業の遂行度と満足度を点数化していきます.

 

重要度を決定する過程と同様にカードを提示して点数をつけていきます.それによりクライエントの作業に対する遂行度と満足度の点数化が可能になります.遂行度と満足度を合計して,列挙した作業(問題)数で割ると遂行度スコアおよび満足度スコアが計算できます

 

4段階:再評価

作業療法介入後に実施します.第1段階で決定して作業の遂行度と満足度を再確認します.再評価スコアから初期評価スコアを引くことでスコアの差が明確になります.遂行度と満足度の総スコアについても再評価の値から引くことで総合的な遂行と満足の変化が計算できます.

 

評価例

(例)退院後に外来作業療法が開始された女性クライエントに対して実施したCOPMの結果を示します.

このクライエントにとって「子供の世話」と「料理を作る」の2つの作業が重要だと分かります.また,「洗濯をする」の遂行度と満足度が高いことが分かります.

このクライエントに対して作業療法を4ヶ月実施した結果を示します.

全ての作業に対する遂行度と満足度が向上したことが分かります.遂行度・満足度の総合スコアは向上しています.特に「友達を訪問する」の遂行度と満足度が向上しています.

 

参考文献

・吉川ひろみ訳:COPM[カナダ作業遂行測定] 第4版.大学教育出版.

・吉川ひろみ:作業療法がわかるCOPMAMPSスターティングガイド.医学書院.

 





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