面接とは?
作業療法,理学療法や言語療法(以下,リハビリテーション)で実施する面接は,対象者と面接者が言語・非言語的なコミュニケーションを通して情報交換や意思疎通を図り,対象者が抱える問題を発見したり,問題を解決する1つの方法です.
面接の成否は事前準備と技術に左右されますが,意外にもあまり重要視されていないように感じます.
面接の目的
面接の目的は大きく分類すると以下の3つになります.
1.対象者・家族との信頼関係を築く
2.説明と同意
3.情報収集と評価
これらは項目はリハビリテーションを円滑に実施していく上で非常に重要です.面接の成否はリハビリテーションの成否に関係があります.
面接の形態
構造化面接
目的・場所・日時・質問内容を設定してマニュアルに沿って行うような面接形態です.質問項目を構造的に並べた質問紙に基づいて順番に質問します.そして,解答に関する選択肢もあらかじめ設定されることが多いです.アンケート調査のようなイメージです.
面接者が誰であっても一定の結果が得られますが,用意された質問以外の情報を得ることができません.
非構造化面接
作業活動が行われている中で交わす会話や雑談などの中で自由に質問や回答を促す面接形態です.事前に詳細な質問項は設定せず,面接者は対象者にとって最も重大で有益で,関係深いと思われることについて探索していきます.
面接者のスキルにより得られる情報に差が生じます.しかし,対象者の特性を細かく収集することが可能です.
半構造化面接
構造化面接と非構造化面接の中間的(ハイブリッド型)な面接形態です.構造化面接と同じように事前に質問内容は設定しますが,面接者は多くの情報を得るために自由に他の質問を行います.
質問内容をあらかじめ設定しているため一定の結果が得ながら,さらに面接者が必要と思う情報を得ることができます.
種類
初回(インテーク)面接
リハビリテーション導入時の面接です.疾患や障害により大きな不安を抱えている対象者の不安を和らげること,そして回復への希望を持たせることを目的に実施します.あいさつ,担当者の自己紹介,リハビリテーションの説明などを行います.馴染みが少ないリハビリテーションの理解を得ることが重要です.
情報収集のための面接
事前にカルテや他部門から収集した情報(現病歴など)の確認や,対象者の主訴やリハビリテーションに対する希望を聴取する目的で実施されます.情報収集内容は主訴・希望,現病歴・既往歴,参加と環境因子などですが,事前に情報収集できている場合は質問項目を取捨選択する必要があります.
評価面接
障害受容や障害の認識度と介入結果への認識,対象者自身の自己評価などを聞き現状把握するために実施する面接です.この面接ではCOPM,興味関心チェックリスト,役割チャックリストなどのツールを用いると対象者の状況を具体的に把握することができます.
位置関係
一般的な対象者と面接者の位置関係を示します.
対面法
対象者と面接者が対面する位置関係です.相手の表情や反応を観察するのに適しています.しかし,心理的負担が強いため信頼関係の構築には不向きな位置関係です.また,対象者は思いや考え(本心・本音)を言いづらい状況になります.身体的状況や予後など確定的なことを伝える場合に適しています.
90°法
対象者と面接者が90°の位置関係です.最も抵抗感が少なく,重要な事を話し合える位置関係です.距離が近くても対象者への心理的負担は少なく,表情も観察しやすい位置関係です.ほとんどの面接に適していますが,意識的に視線を合わせる必要があります.
横並び法
対象者と面接者が同一方向を向く位置関係です.同一方向を向くため視線が合わず心理的緊張は少なくなります.しかし,場の共有を意識することは難しくなります.心理負担をかけないように面接を進める場合に選択されます.
コミュニケーション技能
言語的コミュニケーション
言葉によって行われるコミュニケーションです.声の大きさ,スピード,トーン(抑揚)など言葉に付随するものは準言語的コミュニケーションといいます.
非言語的コミュニケーション
身振りや表情などの身体動作,肩に触れる・頭を撫でるなどの身体接触など言葉以外の手段によるコミュニケーションです.
メラビアンの法則
心理学者メラビアンは,話してが聞き手に与える印象の大きさは視覚情報が全体の55%,次いで聴覚情報が38%,言語情報が7%と報告しています.これをメラビアンの法則といいます.この報告から準言語,非言語コミュニケーションの重要性が理解できます.
質問の形式
閉鎖型質問法(closed question)
「痛みはありますか?」や「朝食は食べましたか?」など対象者が「はい」または「いいえ」で答えられる質問法です.簡潔に,短時間で情報を得ることが可能です.しかし,対象者の訴えを十分に捉えることが困難なため的確で具体的な質問を選択する必要があります.
開放型質問法(open question)
「どのような痛みですか?」や「今日の体調はどうですか?」など対象者が自由に回答する質問法です.対象者の関心事を聴取することが可能です.しかし,時間を要し,必ず重要事項を聴取できるとは限りません.また,言葉少ない対象者には適しません.
重点的質問法(focused question)
得られた情報の詳細を確認するための質問方法です.面接者は欲しい情報(質問項目)を事前に絞り込む必要があります.
中立的質問法(neutral question)
「それはどんな意味ですか?」や「それからどのように対処したのですか?」など面接者の意見や考えを排除して,対象者の発言を促す質問方法です.対象者の考えや思いを深めることが可能ですが,面接者は話の方向づけができる能力が必要になります.
多項目質問法(multiple question)
「痛みがあるのは肩ですか?肘ですか?」や「動きづらいのは朝ですか?日中ですか?それとも夕方ですか?」など複数の選択肢を示す質問方法です.
まとめ
リハビリテーションを円滑に進めるための面接について解説しました.熟練者は意識的または無意識的にさまざまな面接技術を駆使して対象者から情報を得ています.
面接の目的を明確にし,質問項目,面接形態,環境などの事前準備を整え,コミュニケーション技能を駆使して対象者から必要な情報を得られるようにしましょう!
円滑なリハビリテーションを実施するための第一歩です!
参考文献
・能登真一ほか:標準作業療法学 専門分野 作業療法評価法 第3版.医学書院.
・長﨑重信ほか:作業療法学 ゴールド・マスター・テキスト 作業療法評価学.MEDICAL VIEW.
・松澤正ほか:理学療法評価学 改訂第6版.金原出版株式会社.