根拠に基づいた理学療法や作業療法を実施するためには最新の知見を入手しなければなりません.インターネットの普及により,以前に比べ情報へのアクセスは容易になりました.しかし,入手した情報(論文)を活用するためには,最低限の統計学的知識が必要です.ここでは,尺度について説明します.
データの種類
統計は分析する対象データがどのようなものかを把握するところから始まります.
データは質的データと量的データがあります.質的データは名義尺度と順位尺度,量的データは間隔尺度と比例尺度に分類されます.
ここでは質的尺度(名義尺度と順位尺度)を解説します.
名義尺度
名義尺度は,測定対象を区分するために利用する尺度です.
このようなアンケートを経験したことはありませんか?
私はA型なので回答は1です.同じようにB型の人は2,O型の人は3,AB型の人は4になります.これらの数字は分類のみに使用されます.
そのため,
・1(A型)は2(B型)より小さい
・1(A型)+3(O型)÷ 2=2(B型)
B型はA型より大きい(意味不明),A型とO型を足して2で割るとB型に…ますます意味不明です.これらは成立しません.
このようにデータのみを解釈する場合に用いられる尺度を名義尺度といいます.
理学療法や作業療法では,カルテから得られる性別,職業,健康保険の種類などの情報が名義尺度に分類されます.
順位尺度
順位尺度は,数値の大小のみを把握することができる尺度です.
リオデジャネイロオリンピック(2016)男子100m走の結果を示します.
1位の選手は2位の選手より速いです.そして,2位の選手は3位の選手より速いです.このように数字の大小で優劣を示すことが可能です.
次にタイム差をみてみましょう.1位と2位の選手のタイム差は0.08秒,2位と3位の選手のタイム差は0.02秒と順位間の差は一定ではありません.
このように数値の大小(順位)には意味があるが,間隔には意味がない尺度を順位尺度といいます.数値の間隔に意味がないので1位+2位≠3位のように足し算や引き算が成立しません.
理学療法や作業療法分野でおなじみのMMT(Manual Muscle Testing)は順位尺度です.0より1,2よりも3のように数値が上がれば筋力が大きいと判断されます.しかし,0と1(筋収縮の有無),2と3(徐重力運動と抗重力運動)のように数値間の差は等間隔ではありません.
Brunnstrom recovery stage(BRS),Yahr の重症度分類やmodified Ashworth scale(MAS)なども順位尺度に含まれます.
まとめ
名義尺度と順位尺度を解説しました.
名義尺度は分類の順序に意味がないもの,順位尺度は意味があるのもです.言葉での理解が難しい場合は,例題などを理解する方が実用的だと思います.
参考文献
・竹田徳則ほか:作業療法研究法.医歯薬出版株式会社.
・石川朗ほか:15レクチャーシリーズ リハビリテーション統計学.中山書店.
・関屋曻:真に役立つ研究のデザインと統計処理.三輪書店.