二酸化炭素の運搬
アシドーシスとアルカローシスを理解するためには,血液による二酸化炭素の運搬(ガス交換)を理解する必要があります.
体内でのヘモグロビンによる酸素の運搬はこちら↓
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生理学基礎講座|酸素解離曲線
ガス交換 場所 体内でガス交換が行われる場所は大きく分けて2カ所です.まず1つ目は肺です.肺胞の外側には毛細血管が網目状に密着して取り囲んでいます. 肺胞と毛細血管の間でガス交換が行われます.赤血球が ...
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二酸化炭素の運搬
二酸化炭素(CO2)の運搬には赤血球が重要な働きをします.二酸化炭素は,そのままの形で血漿(血液の液体成分)に溶解して運搬(5%),ヘモグロビンなどのタンパク質に結合して運搬(5%),残りの約90%は赤血球内で炭酸脱水素酵素の作用で重炭酸イオン(HCO3−)となって血漿または赤血球内に溶血して運搬されます.
ガス交換の化学式が重要になるので紹介します.
実はこちらの化学式がpHの調整を理解するために非常に重要になります.
pH
pHは水素イオン(H+)の濃度を示す指標です.最も強い酸性0(zero)から最も強いアルカリ性14までの段階に分けられています.
血漿のpHは7.4±0.05の非常に狭い範囲で一定に保たれています.pHの値を体内で一定にコントロールする仕組みを緩衝作用といいます.
アシドーシスとアルカローシス
血漿のpHが7.35より酸性に傾いた場合(<7.35)をアシドーシス,7.35よりアルカリ性に傾いた場合(7.35<)をアルカローシスといいます.
ココがポイント
アルカリ性に傾くアルカローシス.アルアルで覚えましょう!
なぜ血漿は酸性(またはアルカリ性)に傾くのでしょうか?それはH+の量が関係しています.H+が多い場合は酸性に,少ない場合はアルカリ性に傾きます.
呼吸性アシドーシス
先ほどの二酸化炭素運搬の化学式を思い出して下さい.末梢組織でのガス交換時にH+が産生されています.
1つのCO2から1つのH+ができています.CO2が増えればH+(重炭酸イオン:HCO3−も)も増えます.CO2が増える(二酸化炭素分圧上昇:PaCO2)のはどんな状態のときでしょうか?
それは二酸化炭素を体外に排出(呼出)できない状態,つまり閉塞性換気障害の場合です.閉塞性換気障害はこちら↓
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体外にCO2を呼出できず,H+が増えるので酸性に傾きます.呼吸が原因でアシドーシスへ傾く状態を呼吸性アシドーシスといいます.
CO2ナルコーシス
慢性閉塞性肺疾患者に高濃度の酸素(O2)を投与すると,頭痛,めまい,発汗などが出現し意識障害レベルが低下し昏睡状態になります.この状態をCO2ナルコーシスといいます.これは高濃度の酸素投与により低酸素刺激がなくなり,急激にPaCO2が上昇するために起こります.
呼吸性アルカローシス
アシドーシスの逆でCO2が減る場合はどんな時でしょうか?それは呼吸数が増えて(過換気症候群),CO2が体外に多く排出(呼出)される場合です.
体内からCO2が減少(PaCO2低下)すると,CO2を生産するためにH+とHCO3-が消費されます.すると必然的にH+の量が少なくなりアルカリ性に傾きます.呼吸が原因でアルカローシスへ傾く状態を呼吸性アルカローシスといいます.
代謝性アシドーシス
呼吸性アシドーシス以外の原因によるアシドーシスを代謝性アシドーシスといいます.代謝性アシドーシスの原因は,腎臓や細胞での代謝機能障害によって血液中の酸の産生過剰,下痢などによるHCO3-の過剰排泄です.その結果,H+が増えpHは酸性に傾きアシドーシスになります.
糖尿病性ケトアシドーシス
1型糖尿病では,エネルギー不足になった場合に緊急的に脂肪を分解してエネルギーを確保します.しかし,脂肪の分解によって血液中にケトン体が増え,酸性に傾きアシドーシスになります.この状態を糖尿病性ケトアシドーシスといいます.そして,酸性に傾いた血液(CO2濃度が高い)を,CO2を呼出して正常なpHに戻すために,深く,そして速い呼吸になります.この呼吸状態をクスマウル(Kussumaul)呼吸といいます.
代謝性アルカローシス
呼吸性アルカローシス以外の原因によるアルカローシスを代謝アルカローシスといいます.代謝性アルカローシスの原因は,嘔吐による酸の喪失,利尿薬投与などです.その結果,H+は減少しpHはアルカリ性に傾きアルカローシスになります.
まとめ
アシドーシスとアルカローシスには二酸化炭素分圧(PaO2)と重炭酸イオン(HCO3-)が関連します.
pH | PaCO2 | HCO3- | |
呼吸性アシドーシス | ↓ | ↑ | ↑ |
呼吸性アルカローシス | ↑ | ↓ | ↓ |
代謝性アシドーシス | ↓ | (↓) | ↓ |
代謝性アルカローシス | ↑ | (↑) | ↑ |
呼吸性の場合はPaCO2が関連します.その状態を元に戻そうと腎臓でHCO3-を調整します(腎性代償).呼吸性アシドーシスの場合はHCO3-の再吸収を促進し,呼吸性アルカローシスの場合はHCO3-を排出します.
代謝性の場合はHCO3-が関連します.その状態を元に戻そうと呼吸でCO2を調整します(呼吸性代償).代謝性アシドーシスの場合はCO2の排出を促進し,代謝性アルカローシスの場合はCO2の排出を抑制します.
参考文献
・岡田隆夫ほか:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 生理学 第5版.医学書院.
・麻見直美ほか:栄養科学イラストレイテッド 運動生理学.羊土社.
・高橋仁美ほか:動画でわかる 呼吸リハビリテーション 第4版.中山書店.