大腿骨近位部骨折|基礎編

大腿骨近位部骨折とは…?

大腿骨の近位部(股関節に近い部分)は骨頭、頸部、転子部、転子下部に分かれています。

骨折が発生する場所によって①骨頭骨折、②頸部骨折、③転子部骨折、④転子下部骨折に分類されます。高齢者に発生する頻度が高いのは大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折です。これらの骨折は骨脆弱性(骨が脆い状態)により強い外力が働かなくても生じます。

発生状況

好発年齢

日本整形外科学会が2009年から2014年に行った調査結果です。(Hiroshi Hagino et al:Survey of hip fractures in Japan: Recent trends in prevalence and treatment.  Journal of Orthopaedic Science 22 (2017) 909-914をもとに作成)

大腿骨頸部および転子部骨折の総数は男性105,890名(35歳以上)、女性381,560名(35歳以上)で、圧倒的に女性が多い状況です。また、この期間の大腿骨頸部骨折数は234,874件、大腿骨転子部骨折は251,796件で大腿骨転子部骨折は大腿骨頸部骨折に比べやや多い状況です。

 

発生数

日本整形外科学会が2009年から2014年に行った調査結果です。

引用元 Hiroshi Hagino et al:Survey of hip fractures in Japan: Recent trends in prevalence and treatment.  Journal of Orthopaedic Science 22 (2017) 909-914

aは女性、bは男性の年齢別患者数です。男性・女性ともに70歳を過ぎると患者数は急激に増加します。患者数は男性は80-84歳女性は85-89歳で最も多くなっています。

 

分類

骨折した際に骨折して骨が移動することを転位といいます。転位の状態により大腿骨近位部骨折は分類することができます。

大腿骨頸部骨折

大腿骨頸部骨折の分類にはGarden(ガーデン)分類が広く用いられています。

引用元 野田知之ほか: 大腿骨頚部・転子部骨折のガイドライン.岡山医学会雑誌 第122巻 December 2010, pp. 253-257

a:stage Ⅰ b:stage Ⅱ c:stage Ⅲ d:stage Ⅳ

stage Ⅰ:不完全骨折

stage Ⅱ:転位のわずかな完全骨折

stage Ⅲ:骨頭が転移した完全骨折(骨頭への血液の供給は一部で保たれている)

stage Ⅳ:すべての連続性がたたれた完全骨折

ココがポイント

判定者間での一致率が低いためstage ⅠとⅡを合わせて非転移型、ⅢとⅣを合わせて転移型と分類する場合があります。

 

大腿骨転子部骨折

転子部骨折の分類にはEvans(エヴァンス)分類、Jensen分類、AO分類などが用いられます。

 

治療方法

大腿骨頸部骨折

大腿骨頸部骨折は手術療法が推奨されています。手術方法は骨接合術と大腿骨頭置換術に分類されます。

引用元 野田知之ほか: 大腿骨頚部・転子部骨折のガイドライン.岡山医学会雑誌 第122巻 December 2010, pp. 253-257

転位が少ない非転移型(stage Ⅰ・Ⅱ)の場合は骨接合術(図左)、転位が大きい転移型(stage Ⅲ・Ⅳ)は人工骨頭置換術(図右)が推奨されます。

ココがポイント

大腿骨頸部骨折は関節内骨折のため、癒合不全(骨が上手くつかない)、大腿骨頭壊死(骨細胞が死ぬ)、遅発性の骨頭圧潰(late segmental collapse:LSC)が問題となる場合があります。

 

大腿骨転子部骨折

大腿骨転子部骨折は手術療法が推奨されています。

引用元 野田知之ほか: 大腿骨頚部・転子部骨折のガイドライン.岡山医学会雑誌 第122巻 December 2010, pp. 253-257

手術方法はsliding hip screw(CHS タイプ:図左)、short femoral nail(gamma nailタイプ:図右)に分類されます。

参考資料

 




-大腿骨近位部骨折, 整形外科

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