慢性閉塞性肺疾患(COPD)|理学療法士・作業療法士国家試験必修ポイント

呼吸器疾患の中でCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は出題頻度の高い疾患です.ここでは,COPDについての国家試験対策ポイントを解説します.

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閉塞性換気障害と拘束性換気障害|理学療法士・作業療法士国家試験必修ポイント

閉塞性換気障害と拘束性換気障害 閉塞性換気障害 気道の狭窄により,スムーズに息が吐けない状態(呼気障害).1秒量と1秒率の低下が特徴で,1秒率が70%以下の場合に閉塞性換気障害と診断されます. 疾患名 ...

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COPDchronic obstructive pulmonary disease

喫煙や有害物質(粉塵など)を長期に吸入暴露することにより生じる呼吸器の炎症性疾患です(喫煙は最大の危険因子).男性の有病率は女性の約3倍で,40歳以降に好発します.

ちなみに

男性の喫煙率が高いため,女性に比べ有病率が高くなっています.男性の2019年死因順位でCOPD9位でした.男女合計では上位10位に入っていません.(厚生労働省 人口動態統計より)

病型

分類 病態
気腫型 肺胞壁の破壊による肺胞内圧の低下に伴う気流制限(線維化は認めない).
非気腫型 気道炎による粘液分泌の貯留と平滑筋肥厚による気道の閉塞と狭小化.

過去の問題では「肺気腫」と「慢性気管支炎」で別々に出題されていました.COPDは双方の特徴を併せ持つ病態のため,近年の国家試験ではCOPDで統一されています.

 

症状

主症状は,咳嗽・喀痰・労作時呼吸困難です.主訴は労作時呼吸困難感ADLQOLの低下を引き起こします.

視診項目 病態
樽状胸郭 肺の膨張により胸郭の前後径が増大
奇異呼吸 吸気時に胸郭拡張,腹部陥没(呼気時は逆)
フーバーサイン 吸気時に横隔膜の位置が通常より下がり,下部肋骨が陥没
胸鎖乳突筋肥大 呼吸補助筋の活動増加による肥大
口すぼめ呼吸 呼吸が楽な口すぼめ呼吸を無意識に行う

 

肺コンプライアンス

肺コンプライアンスは肺の拡張しやすさを表す指標です.COPDは肺胞が破壊され,肺の弾力性が失われ伸張されやすく,収縮しにくい状態になります.そのため,肺コンプライアンスは増加します.

ちなみに

拘縮性換気障害の間質性肺炎は肺コンプライアンスは低下します.

 

リハビリテーション

運動療法

持久力・耐久性トレーニング,筋力トレーニング,コンディショニングは科学的に有効性が示されています.

 

呼吸法

口すぼめ呼吸腹式呼吸が推奨されています.

口すぼめ呼吸は軽く口をすぼめてゆっくり呼出します.それにより気道の虚脱を抑え,呼吸数の減少と1回換気量の増大,動脈血ガス所見の改善,換気血流の不均等分布の改善されます.呼気は吸気の2倍程度の時間をかけることを意識します.

 

ADL指導

ADL指導のポイントは禁止動作を把握することです.

  • 両腕を上げる動作
  • 息を止めて力む動作
  • 反復して行う動作
  • 体幹を前屈して行う動作

これらの動作は血中酸素飽和度が低下しやすく労作時呼吸困難をまねく可能性があります.

注意点
食事 熱い食べ物,刺激の強いもの(辛い,酸っぱい)を避ける(むせるため).麺類,水分はSpO2が低下する.
更衣 かぶりシャツは両腕を上げるため避ける.
整容 前屈みになって洗顔しない(腹圧があがるため).
排泄 洋式トイレを使用する.力まずゆっくり行う.
入浴 胸までお湯につからない.洗髪は片手で,シャンプーハットを使用する.

ADLの禁止動作をしっかり把握していれば,指導のポイントは理解しやすいです.また,対象者の生活様式に応じて工夫する必要があります.

 

まとめ

COPDについて解説しました.赤字の部分はしっかりと把握してください.また,OTの場合はADL指導の問題が出題される傾向にあるので,禁止動作を必ず覚えるようにしましょう.

 

参考文献

・前田眞治ほか:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 内科学 第3版.医学書院.

・山口昇ほか:標準作業療法学 専門分野 身体機能作業療法学 第3版.医学書院.

・小林隆司:PTOTビジュアルテキスト 身体障害作業療法2 内部疾患編 第1版.羊土社.

 




-内科学

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