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解剖学
問題51
手の外来筋はどれか。
1.短母指外転筋
2.短小指屈筋
3.短母指屈筋
4.短母指伸筋
5.短掌筋
+ 解説
正解:4
解説
手の外来筋(外在筋)は、手関節よりも近位に起始があり手指の運動を行う骨格筋です。手関節よりも遠位に起始と停止を持つ筋は手内筋と呼ばれます。手内筋は母指球筋・中手筋・小指球筋に分類されます。
母指球筋 |
短母指屈筋・短母指外転筋・母指内転筋・母指対立筋 |
中手筋 |
虫様筋・背側骨間筋・掌側骨間筋 |
小指球筋 |
短掌筋・短小指屈筋・小指外転筋・小指対立筋 |
問題52
下行神経路はどれか。
1.後脊髄小脳路
2.前脊髄視床路
3.前脊髄小脳路
4.外側脊髄視床路
5.外側皮質脊髄路
+ 解説
正解:5
解説
神経路は上行性神経路(感覚路または求心路)と下行性神経路(運動路または遠心路)に分類されます。
感覚路 |
前脊髄視床路・外側脊髄視床路・前脊髄視床路・後脊髄視床路・脊髄オリーブ路・脊髄網様体路など |
運動路 |
外側脊髄視床路・前脊髄視床路・皮質脊髄路など |
問題53
閉鎖神経で正しいのはどれか。
1.第1仙髄神経根からの線維を含む。
2.大腿外側の表在覚を支配する。
3.仙骨神経叢から分岐する。
4.坐骨切痕を通る。
5.薄筋を支配する。
+ 解説
正解:5
解説
閉鎖神経(L2-4)は大腰筋内側縁→仙腸関節前面→内腸骨動・静脈と尿管の外側→小骨盤に入ります。その後、内閉鎖筋の上方を閉鎖動・静脈に伴って走行して閉鎖管(閉鎖孔上部)を通って大腿上部内側で前枝と後枝に分枝します。
1・3.閉鎖神経は腰神経叢に含まれます。
2.閉鎖神経は大腿上部内側に皮枝を出します。
4.閉鎖神経は閉鎖孔の上部にある閉鎖管を通過します。
5.閉鎖神経は外閉鎖筋と内転筋群(薄筋・恥骨筋・長内転筋・短内転筋・大内転筋)を支配します。
問題54
大動脈弓から直接分枝するのはどれか。2つ選べ。
1.腕頭動脈
2.右鎖骨下動脈
3.左鎖骨下動脈
4.右椎骨動脈
5.左椎骨動脈
+ 解説
正解:1・3
解説
大動脈弓は上行動脈と下行動脈の間で上方に弯曲している部分です。大動脈弓から腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈が枝分かれします。
2.右鎖骨下動脈は腕頭動脈から分枝します。
4・5.椎骨動脈は鎖骨下動脈から分枝します。
問題55
小網でつながる臓器はどれか。2つ選べ。
1.胃
2.肝臓
3.十二指腸
4.腎臓
5.膵臓
+ 解説
正解:1・2・3(複数の正解があるため複数の選択肢を正解とする:厚生労働省発表)
解説
肝臓と胃の間で腹膜が2枚重なっている部分を小網といいます。胃を包み下方に垂れさがり、横行結腸と連絡している腹膜を大網といいます。
問題56
肺の構造で正しいのはどれか。
1.左肺には3本の葉気管支がある。
2.1本の葉気管支は6本の区域気管支に分かれる。
3.左肺には12本の区域気管支がある。
4.細気管支は軟骨を欠く。
5.左右の肺には約5,000万個の肺胞が存在する。
+ 解説
正解:4
解説
肺は左右1対の器官で胸腔の左右に離れて位置しています。左右の肺の間には縦隔があります。
1・2.右肺は3葉(上葉・中葉・下葉)、左肺は2葉(上葉・下葉)に別れ、それぞれ1本の葉気管支が分布しています。
3.葉気管支は肺区域に対応して右肺では10本、左肺では8-9本の区域気管支に別れます。
4.区域気管支は軟骨と気管支腺を失い細気管支となり肺小葉に分布し、さらに分岐して肺胞となります。
5.肺胞はガス交換が行われる場所で、左右の肺には2-6億個が存在しています。
*気管支の分岐:主気管支→葉気管支→区域気管支→細気管支→終末気管支→呼吸細気管支→肺胞管→肺胞嚢→肺胞
問題57
腎臓から分泌されるホルモンはどれか。2つ選べ。
1.レニン
2.メラトニン
3.カルシトニン
4.バソプレシン
5.エリスロポエチン
+ 解説
解答:1・5
解説
2.メラトニンは松果体で合成・分泌されるホルモンです。
3.カルシトニンは甲状腺C細胞から分泌されるホルモンです。
4.バドプレシンは下垂体後葉から分泌されるホルモンです。
問題58
眼球で誤っているのはどれか。
1.視細胞には錐体と桿体とがある。
2.視神経乳頭は黄斑より内側にある。
3.錐体は中心窩にある。
4.前眼房は眼房水で満たされている。
5.毛様体は瞳孔の大きさを調節する。
+ 解説
解説:5
1.視細胞は錐体細胞と桿(杆)体細胞に分類されます。錐体は明るいところで色調を、桿体は明暗を感知します。
2.視神経乳頭は視軸内側に位置します(黄斑は視神経乳頭から外側やや下方に位置する)。視神経乳頭には視細胞が存在しないため盲点なります。
3.黄斑の中央部には中心窩があります。黄斑部には錐体が多く、黄斑周囲に桿体が多く存在します。
4.角膜と虹彩の間を前眼房、虹彩・毛様体と水晶体の間を後眼房といいます。前眼房と後眼房は毛様体から分泌される眼房水で満たされています。眼房水はリンパ液の一種で角膜と水晶体を栄養しています。
5.毛様体と水晶体は毛様体小帯で連結して水晶体の厚みを調整します。毛様体の内部には毛様体筋(平滑筋)があり、毛様体筋が収縮すると水晶体は厚みを増します(近くに焦点が合う)。
瞳孔の大きさを調整するのは虹彩です。虹彩内には瞳孔括約筋(動眼神経支配)と瞳孔散大筋(交感神経支配)の2つの平滑筋があり、瞳孔括約筋が収縮すると瞳孔は小さくなり、瞳孔散大筋は瞳孔を拡大させる。
問題59
皮下組織の直下に筋腹を触知できる筋はどれか。
1.棘上筋
2.深指屈筋
3.方形回内筋
4.中間広筋
5.後脛骨筋
+ 解説
解説:2
1.棘上筋は僧帽筋の深部に位置し、三角筋に覆われています。
3.方形回内筋は前腕前面遠位1/4の深層に位置しています。
4.中間広筋は大腿直筋の深層に位置しています。
5.ヒラメ筋と腓腹筋に覆われています。(内果の後方で腱を触知することはできる)
問題60
腸骨稜に付着する筋はどれか。
1.広背筋
2.小殿筋
3.僧帽筋
4.多裂筋
5.大腰筋
+ 解説
解答:1
解説:
1・広背筋は下部胸椎棘突起から仙椎棘突起・腸骨稜・下部肋骨・肩甲骨下角・胸腰筋膜から上腕骨小結節稜に付着します。
2.小殿筋はT12-L1の椎体から寛骨弓状稜・腸骨筋膜に付着します。
3.僧帽筋は外後頭隆起・項靭帯・C7-T12の棘突起から鎖骨・肩峰・肩甲筁棘に付着します。
4.多裂筋は仙骨前面・腰椎乳頭突起・胸椎横突起・C4-7の関節突起からL2-5の棘突起に付着します。
5.大腰筋はL1-4椎体および横突起から大腿骨小転子に付着します。
生理学
問題61
細胞内小器官の働きで正しいのはどれか。
1.中心小体は転写を開始する。
2.リソゾームは ATP を合成する。
3.粗面小胞体で蛋白質が合成される。
4.Golgi装置で細胞内の物質を分解する。
5.ミトコンドリアは細胞分裂において染色体の分離を担う。
+ 解説
解答:3
解説
細胞内の核以外の部分を細胞質といいます。細胞質にはさまざまな構造物があり、それらは細胞内小器官(細胞小器官)と呼ばれます。
1.中心小体は細胞分裂時に細胞の両極に移動して星状体を作り、染色体を両極へ引き寄せする作用があります。
2.リソゾームは古くなった細胞小器官や細胞内に侵入した外来物質を分解して再利用します。
3.小胞体の表面にリボソームが付着しているものを粗面小胞体といいます。粗面小胞体ではタンパク質の合成が行われます。小胞体の表面にリボソームが付着していないものを滑面小胞体といいます。滑面小胞体は脂肪の合成・分解、カルシウムイオンの貯蔵・輸送を行います。
4.Golgi(ゴルジ)装置は合成されたタンパク質に糖鎖を付けるなどの修飾を行います。
5.ミトコンドリアではATPの大部分が産生されます。また、細胞死(アポトーシス)に際してミトコンドリアから細胞質中へ放出された酵素が一連の化学反応の引き金になります。
問題62
深部腱反射で誤っているのはどれか。
1.錘内筋線維が受容器となる。
2.感覚入力はIa線維を介する。
3.運動出力はα運動ニューロンを介する。
4.Renshaw 細胞はα運動ニューロンから入力を受ける。
5.γ運動ニューロンの興奮により深部腱反射は減弱する。
+ 解説
解答:5
解説
深部腱反射(伸張反射):急激な筋の伸張刺激(打腱器などでの叩打)→筋紡錘(受容器)→Ⅰa線維→脊髄→α線維→筋収縮
4.Renshaw 細胞は抑制性の神経細胞です。脊髄の運動ニューロンは脊髄内で側枝を出してシナプスを作ります。
5.γ運動ニューロンは筋紡錘を支配します。γ運動ニューロンの興奮により筋紡錘(錘内筋)の感受性が上がるため、腱反射は亢進します。
問題63
消化酵素で正しいのはどれか。
1.αアミラーゼはデンプンをデキストリンに分解する。
2.トリプシンは蛋白質をポリペプチドに分解する。
3.ペプシンはトリグリセリドを脂肪酸に分解する。
4.マルターゼはスクロースをブドウ糖に分解する。
5.ラクターゼは乳糖をマルトースに分解する。
+ 解説
解答:1・2(複数の正解があるため複数の選択肢を正解とする:厚生労働省発表)
解説
1.唾液に含まれるαアミラーゼはデンプンを二糖類〜デキストリンに分解します。また、膵液に含まれるαアミラーゼはデンプンを二糖類・麦芽糖(マルトース)に分解します。
2.トリプシンは膵液に含まれる酵素でポリペプチドをトリペプチドに分解します。
3.ペプシンは胃液に含まれる酵素でタンパク質を分解してポリペプチド(ペプトン)に分解します。
4.マルターゼは腸液に含まれる酵素で麦芽糖をブドウ糖(グルコース)に分解します。
5.ラクターゼは腸液に含まれる酵素で乳糖をブドウ糖・ガラクトースに分解します。
問題64
心臓の刺激伝導系で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.洞房結節は心室中隔にある。
2.房室結節の伝導速度はHis束より速い。
3.房室結節の興奮はHis束より先に生じる。
4.刺激伝導系の細胞は活動電位を生成できる。
5.洞房結節の活動電位持続時間はPurkinje線維より長い。
+ 解説
解答:3・4
解説
心臓の興奮は洞房結節→房室結節→His(ヒス)束→右脚・左脚→プルキンエ線維の順に伝わります。この興奮を伝える組織を刺激伝導系といいます。刺激伝導系は特殊心筋からなり自ら活動電位を発生させることができます。
1.洞房結節は特殊な心筋細胞が集まった部分で、右心房の上大静脈入口付近に存在します。
2.刺激伝導系の伝導速度は、ヒス束・プルキンエ線維は2-5m /秒、心房筋・心室筋は1m /秒、房室結節は3cm /秒です。房室結節の伝導速度が遅いため、心房が収縮していても心室は弛緩している状態です。そのため、心房から心室へ血液を送ることが可能になっています。
5.洞房結節の活動電位持続時間は100-300msecでプルキンエ線維(300-500msec)よりも短いのが特徴です。
問題65
I型アレルギーに関与する抗体はどれか。
1.IgA
2.IgD
3.IgE
4.IgG
5.IgM
+ 解説
解答:3
解説
IgEは気管支喘息などⅠ型アレルギーを起こすレアギン抗体です。
問題66
排尿に関与する神経はどれか。2つ選べ。
1.陰部神経
2.下腹神経
3.上殿神経
4.閉鎖神経
5.迷走神経
+ 解説
解答:1・2
解説
排尿に関与する内尿道括約筋は交感神経(下腹神経)・副交感神経(骨盤神経)、外尿道括約筋は陰部神経に支配されます。
問題67
血糖を上昇させる作用のあるホルモンはどれか。2つ選べ。
1.アドレナリン
2.アルドステロン
3.カルシトニン
4.グルカゴン
5.パラトルモン
+ 解説
解答:1・4
解説
1.アドレナリンは副腎髄質から分泌されるホルモンで、交感神経を興奮させて肝臓・骨格筋におけるグリコーゲン分解を促進させ血糖値を上昇させる作用があります。
2.アルデステロンは副腎皮質から分泌されるホルモンで、腎臓(集合管)でのNa+の再吸収を促進して、血圧を上昇させる作用があります。
3.カルシトニンは甲状腺ホルモンから分泌されるホルモンで、破骨細胞を抑制して腎臓でのCa2+排泄を促進して血漿Ca2+濃度を低下させる作用があります。
4.グルカゴンは膵臓から分泌されるホルモンで、肝臓からグルコースを血液中に放出させ血糖値を
5.パラトルモン(パラソルモン)は副甲状腺から分泌されるホルモンで、骨吸収の促進・腎臓でのCa2+の再吸収を促進して血漿Ca2+濃度を上昇させる作用があります。
問題68
女性生殖器で誤っているのはどれか。
1.原始卵胞は新生児にある。
2.成人の卵巣の重さは約6 gである。
3.原始卵胞の成熟は思春期に始まる。
4.卵細胞は始原生殖細胞に由来する。
5.黄体ホルモン上昇により排卵が誘発される。
+ 解説
解答:5
解説
5.黄体ホルモン(プレゲステロン)は排卵後の黄体から分泌され、子宮を安定化させる(妊娠を持続させる)作用があります。排卵は黄体形成ホルモン(LH)によって誘発されます。
問題69
肺活量算出に最低限必要な肺気量分画はどれか。2つ選べ。
1.予備吸気量
2.予備呼気量
3.1回換気量
4.全肺気量
5.残気量
+ 解説
解答:4・5
解説
最大吸気の状態から最大限に呼出される空気量を肺活量(予備吸気量+1回換気量+予備吸気量)といいます。全排気量は予備吸気量+1回換気量+予備吸気量+残気量のため、全排気量から残気量を引くと肺活量を求めることができます。
運動学
問題70
足部内側縦アーチの維持に最も関与するのはどれか。
1.三角靱帯
2.長足底靱帯
3.後脛骨筋
4.足底筋
5.第三腓骨筋
+ 解説
解答:3
解説:内側縦アーチは土踏まずを形成して歩行運動に重要な働きを示します。内側縦アーチを構成する骨は踵骨―距骨―舟状骨―内側楔状骨―第1中足骨です。靭帯は底側踵舟靭帯・距踵靭帯・楔舟靭帯・足根中足靭帯、筋は後脛骨筋・前脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・母趾外転筋です。
問題71
右下肢の筋を伸張している様子を図に示す。最も伸張される筋はどれか。
1.薄 筋
2.中間広筋
3.半膜様筋
4.大腿方形筋
5.大腿筋膜張筋
+ 解説
解答:5
解説
右下肢は股関節伸展・内転位にあるため、股関節屈曲・外転に作用する筋が伸張されます。大腿筋膜張筋は股関節・外転に作用する筋のため最も伸張されています。
問題72
手指の筋と作用の組合せで正しいのはどれか。
1.掌側骨間筋 ―― MP関節伸展
2.浅指屈筋 ――― DIP関節屈曲
3.短母指伸筋 ―― IP関節伸展
4.虫様筋 ―――― MP関節屈曲
5.背側骨間筋 ―― PIP関節屈曲
+ 解説
解答:4
解説
1.掌側骨間筋はMP関節の内転に作用します。(MP屈曲・IP伸展の補助作用あり)
2.浅指屈筋はPIP関節の屈筋に作用します。(手関節屈曲・MP屈曲の補助作用あり)
3.短母指伸筋は母指CM関節尺側内転・掌側内転と母指MP関節の屈曲に作用します。
4.虫様筋はMP関節の屈曲とIP関節の伸展に作用します。
5.背側骨間筋はMP関節の外転に作用します。(MP屈曲・IP伸展の補助作用あり)
問題73
鉄棒に肩関節屈曲90°、肘関節屈曲90°の肢位で懸垂している状態からゆっくりと体を下降させているとき、遠心性収縮をする筋はどれか。
1.棘上筋
2.広背筋
3.烏口腕筋
4.三角筋前部
5.大胸筋鎖骨部
+ 解説
解答:2
解説
筋長が伸張しながら(起始と停止が離れながら)する収縮を遠心性収縮といいます。肩関節90°屈曲・肘関節90°屈曲位から体を下降させていくと、肩関節は屈曲方向・肘関節は伸展方向に運動が行われます。そのため、肩関節伸展(肩関節屈曲と逆の作用)と肘関節屈曲(肘関節伸展と逆の作用)に作用する筋が遠心性収縮を行なっています。
問題74
正常歩行で遠心性収縮をする筋はどれか。2つ選べ。
1.踵接地から足底接地までの前脛骨筋
2.足底接地から立脚中期までの下腿三頭筋
3.立脚中期から踵離地までの大殿筋
4.加速期から遊脚中期までの内側広筋
5.遊脚中期から減速期までの腸腰筋
+ 解説
解答:1・2
解説
1.踵接地から足底接地に向けて足関節は底屈方向に運動します。前脛骨筋は足関節背屈に作用する筋で、前脛骨筋の遠心性収縮によって前足部はゆっくりと地面に接地することができます。
2.足底接地から立脚中期まで足関節は背屈方向に運動します。下腿三頭筋は足関節底屈に作用する筋で、下腿三頭筋の遠心性収縮によって脛骨の前方への回転を制御することができます。
3.立脚中期から踵離地までの股関節は伸展方向に運動します。大殿筋は股関節伸展に作用する筋のため遠心性収縮ではありません。
4.加速期から遊脚中期までの膝関節は伸展方向に運動します。内側広筋は膝関節伸展に作用する筋のため遠心性収縮ではありません。
5.遊脚中期から減速期までの股関節は屈曲方向に運動します。腸腰筋は股関節屈曲に作用する筋のため遠心性収縮ではありません。
その他(医学分野・リハ概論など)
問題75
退行性病変はどれか。
1.萎 縮
2.化 生
3.肥 大
4.異形成
5.過形成
+ 解説
解答:1
解説
内的・外的なストレスによりホメオスタシスを超えて生じる変性・萎縮(可逆的変化)や細胞死(不可逆的変化)を退行性変化といいます。
1.正常に成長した組織や臓器の容量が減少することを萎縮といいます。
2.すでに分化した細胞が環境変化に適応する過程や、損傷後の修復過程で他の分化した細胞に置き換わる現象を化生といいます。
3.細胞容積の増加による臓器サイズの増大を肥大といいます(細胞増殖はなし)。
4.本来の大きさや形態の細胞と異なり、細胞の形態や核の腫大、クロマチンの増量などが出現している状態を異形成といいます。
5.細胞分裂により細胞数が増加して臓器や組織サイズが増大することを過形成といいます。
問題76
胃全摘出術後の巨赤芽球性貧血で欠乏する栄養素はどれか。
1.ニコチン酸
2.ビタミンA
3.ビタミンB1
4.ビタミンB12
5.ビタミン C
+ 解説
解答:4
解説
ビタミンB12または葉酸の欠乏(利用障害)によって赤芽球の成熟障害により生じる貧血を巨赤芽球性貧血といいます。胃粘膜萎縮や胃切除後の内分泌不全により、小腸でビタミンB12の吸収不全が起こり巨赤芽球性貧血になります。このような貧血をとくに悪性貧血といいます。
問題77
末梢神経の脱髄がみられるのはどれか。
1.多発性硬化症
2.de Quervain 病
3.進行性核上性麻痺
4.腰部脊柱管狭窄症
5.Guillain-Barré 症候群
+ 解説
解答:5
解説
1.多発性硬化症は中枢神経(白質)が侵される慢性炎症性脱髄疾患です。
2.ド・ケルバン病は長母指外転筋腱・短母指伸筋腱が走行する第1手背滑液鞘の狭窄性腱鞘炎です。
3.進行性核状性麻痺は大脳基底核と脳幹の変性症です。
4.腰部脊柱管狭窄症は脊柱管が狭まり脊髄が慢性的に絞扼され神経圧迫症状を呈します。
問題78
性的な欲動をコントロールするために、性的なことを理論的に分析しようとする防衛機制はどれか。
1.抑 圧
2.行動化
3.知性化
4.反動形成
5.スプリッティング
+ 解説
解答:3
解説
1.認めたくない自分の欲求を無意識に押さえ込み、意識に上がらないようにすることを抑制といいます。
2.葛藤やストレス要因に対して内省することなく行動によって対応することを行動化といいます。
4.満たされない欲求を、欲求とは正反対の欲動によって打ち消すことを反動形成といいます。
5.自分や相手の悪い面が良い面を壊してしまう恐れから(非現実)、良い面と悪い面を別物として分けて考えることをスプリッティングといいます。
問題79
Freudの発達論において1 ~ 3歳ころはどれか。
1.口唇期
2.肛門期
3.性器期
4.潜在期
5.男根期
+ 解説
解答:2
解説
フロイトは発達段階において身体の特定部位に関心が高まり、その部位で快感を得ようとすると理論化しました。口唇期(1歳まで)→肛門期(1-3歳)→男根期(3-6歳)→潜伏期(6-11歳)→性器期(11-20歳)に段階は移ります。
問題80
障害受容に至る5つの過程において2番目に現れるのはどれか。
1.解決への努力期
2.ショック期
3.混乱期
4.受容期
5.否認期
+ 解説
解答:5
解説
障害受容はショック期→否認期→混乱期→再起期(解決への努力期)→受容期の5つのプロセスに分かれます。すべての者が順序通りにプロセスを進むわけではなく、受容期に至らないまたは受容に至っても前の段階に戻る場合などがあります。
問題81
思考記録表(コラム表)を用いて現実に沿った考え方や判断ができることを目標とする認知行動療法の技法はどれか。
1.認知再構成法
2.モデリング法
3.問題解決技法
4.系統的脱感作法
5.行動活性化技法
+ 解説
解答:1
解説
思考記録表(コラム表)は自動思考を適応的思考に変える手法です。
2.モデリング法は、①治療者は患者がすべき行動を手本として示す→②患者が手本を模倣(モデリング)して適切な行動を学ぶという学習理論に基づいた技法です。
3.問題解決技法は、①問題の明確化→②解決方法をできるだけ多く抽出する→③解決方法のメリット・デメリットを考える→④メリットが多いものを実行する→⑤実行した結果を振り返る、この5つステップを繰り返して問題解決を図る方法です。
4.系統的脱感作法は患者が避けようとする対象から逃げずに徐々に直面させることで、それらの恐怖(対象)に慣れさせる方法です。
5.行動活性化技法はうつ病に用いられる技法です。①回避行動が抑うつ気分に随伴することを明らかにする→②回避行動に代わる能動的な行動をする→③能動的な行動により気分を上げることを体験する、能動的行動が気分を上げることを繰り返して気分を改善していく技法です。
問題82
脳卒中の評価法とそれに含まれる項目の組合せで正しいのはどれか。
1.JSS ――――― ADL
2.mRS――――― バランス機能
3.FMA――――― 歩行速度
4.SIAS――――― 体幹機能
5.NIHSS―――― 関節可動域
+ 解説
解答:4
解説
1.JSS(Japan Stroke Scale)は主に脳卒中急性期に使用されるスクリーニング検査です。検査項目は意識・言語・無視・視野欠損または半盲・眼球運動障害・瞳孔異常・顔面麻痺・足底反射・感覚系・運動系の10項目です。
2.mRS(modified Rating Scale)はまったく症状のないGrade 0から死亡のGrade 6までの7段階で脳卒中の病態を評価する尺度です。
3.FMA(Fugl-Meyer Assessment)は上肢・手指・下肢の運動機能・反射・協調性を評価する尺度です。
4.SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は脳卒中の包括的評価尺度です。上・下肢運動機能、腱反射、筋緊張、上・下肢感覚機能(触覚・位置覚)、上・下肢可動域、疼痛、腹筋力、垂直性、視空間認知、言語機能、非麻痺側大腿四頭筋力、非麻痺側握力の22項目を点数化します(最大合計76点)。
5.NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale)は脳卒中の重症度を簡便に評価できる尺度です。意識・注視・視野・顔面麻痺・上肢の運動・下肢の運動・運動失調・感覚・言語・構音障害・消去現象と注意障害の項目を点数化します。正常が0点で点数が高くなるほど重症であると判定されます。
問題83
積極的な全身持久力トレーニングを開始してよい状態はどれか。
1.心室頻拍
2.脈拍140/分
3.体温38.6°C
4.収縮期血圧60mmHg
5.経皮的酸素飽和度94 %
+ 解説
解答:5
解説
1.心室頻拍は心室に由来する不整脈で心拍数は120回/分以上になります。また心室期外収縮が3連発以上出現します。
2.安静時脈拍40回/分以下または120回/分以上の場合は積極的なリハビリテーションは実施しません。
3.安静時体温が38℃以上の場合は積極的なリハビリテーションは実施しません。
4.安静時収縮期血圧70mmHg以下または200mm以上の場合は積極的なリハビリテーションは実施しません。
5.安静時SpO2が90%未満の場合は積極的なリハビリテーションは実施しません。
問題84
ASIAの評価対象はどれか。
1.意識レベル
2.運動失調
3.眼球運動
4.肛門感覚
5.深部腱反射
+ 解説
解答:4
解説
ASIA(American Spinal Injury Association)はアメリカ脊髄損傷協会による脊髄損傷の神経学的・機能的国際評価法です。評価は運動スコアと感覚(痛覚・触覚)スコアから構成されます。
問題85
ワルファリンの作用を減弱させるのはどれか。
1.ビタミンA
2.ビタミンB1
3.ビタミンC
4.ビタミンE
5.ビタミンK
+ 解説
解答:5
解説
ワルファリンはビタミンKの作用を抑制することで血栓症を予防します。投与量が多くなると出血性合併症を起こす危険性があります。
問題86
原始反射と誘発される運動の組合せで正しいのはどれか。
1.探索反射 ――――――――――――― 頸部の側屈
2.Galant反射―――――――――――― 体幹の回旋
3.交差性伸展反射 ―――――――――― 刺激反対側の下肢の伸展
4.非対称性緊張性頸反射 ――――――― 頸部を回旋させた側の上肢と下肢の伸展
5.対称性緊張性頸反射(頸部伸展) ―― 上肢の屈曲と下肢の伸展
+ 解説
解答:3・4(複数の正解があるため複数の選択肢を正解とする:厚生労働省発表)
解説
1.探索反射は口唇周囲への刺激で、刺激の方向に開口しながら頭部を向ける反射です。
2.ガラント反射は腹臥位で持ち上げた状態で、背部に頭側から下方へ刺激をすると刺激した側に体幹が側屈する反射です。
5.対称性緊張性頸反射は頭部伸展すると上肢伸展・下肢屈曲する反射です。逆に頭部屈曲すると上肢屈曲・下肢伸展します。
問題87
リンパ浮腫で正しいのはどれか。
1.腹水を伴う。
2.利尿薬で治療する。
3.感染を繰り返しやすい。
4.発症初期から皮膚硬化を生じる。
5.肺血栓塞栓症の原因の一つである。
+ 解説
解答:3
解説
リンパ浮腫はリンパ管の閉塞や圧迫により脈管外組織に過剰な液体成分が漏れ出した状態です。
1.腹水は門脈圧亢進、右心不全、肝不全などにより腹腔に体液が貯留した状態です。リンパ浮腫により腹水は生じません。
2.リンパ浮腫には間欠的圧迫法や弾性ストッキングの着用、生活指導(上肢挙上)などが有効です。
4.皮膚硬化は皮下組織の線維化により生じます。線維化は初期から生じることはなく徐々に進行します。
5.肺塞栓症は下肢深部静脈血栓症からの血栓で発生することがほとんどです。
問題88
Perthes病で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.女児に多い。
2.外傷が誘因となる。
3.片側性の発症が多い。
4.12歳以降に好発する。
5.大腿骨近位骨端部への血行障害が原因である。
+ 解説
解答:3・5
解説
ペルテス病は大腿骨骨頭に生じる骨端症(成長期に生じる阻血性骨壊死)です。4-10歳の男子(女子の4-5倍)に好発し、大部分は片側性に生じます。
問題89
Colles骨折で正しいのはどれか。
1.成人より小児に多い。
2.尺骨遠位端の骨折である。
3.遠位骨片は掌側に転位する。
4.合併症に正中神経損傷がある。
5.骨折の分類にはGarden分類が用いられる。
+ 解説
解答:4
解説
Colles骨折は高齢者に多い骨折の1つで、手掌をついて転倒した際に橈骨の遠位端に生じる骨折です。骨折線は橈骨遠位端に掌側から斜めに背側中枢方向に走り末梢骨片は背側に転位します。
4.腫脹による圧迫で正中神経麻痺を合併することがあります。また、尺骨茎状突起骨折や手根骨骨折を伴うことがあります。
5.Garden分類は大腿骨頸部骨折に用いられる分類です。
問題90
発症後2時間の脳梗塞において典型的な画像所見はどれか。
1.単純CTでの高吸収域
2.単純CTでの低吸収域
3.MRIのT1強調像での高信号領域
4.MRIのT2強調像での高信号領域
5.MRIの拡散強調像での高信号領域
+ 解説
解答:5
解説
拡散強調画像(diffusion weighted image:DWI)は水のブラウン運動を画像化したもので、水分子が動かなくなっている部分が白く写ります。発症後数時間以内の脳梗塞の診断に有用です。
問題91
糖尿病性神経障害に特徴的な所見はどれか。
1.急激な発症
2.自律神経過反射
3.深部腱反射の亢進
4.下肢の靴下型感覚障害
5.近位筋優位の筋力低下
+ 解説
解答:4
解説
糖尿病で生じる神経障害は小径線維(C線維やAδ線維)に症状が出現しやすいと言われています。知覚異常(しびれなど)を自覚する以前に振動覚障害を認めることが多いため、振動覚検査はスクリーニング検査として有用です。症状が進行すると腱反射の低下・消失が認められます。
知覚異常は下肢遠位から始まり、足部の感覚鈍麻は足部感染や壊疽を防ぐために重要なチェックポイントになります。自律神経障害は起立性低血圧、勃起障害、直腸膀胱障害が出現し、心刺激伝導系の障害に伴い心不全(致死性)を合併する可能性があるため注意が必要です。
1・4.発症は緩徐で両側対称性に下肢遠位部の感覚から障害されます。
2.自律神経過反射はT5・6以上の脊髄損傷患者に生じます。
問題92
肝不全でみられるのはどれか。
1.脳 炎
2.裂 肛
3.腹水貯留
4.血小板増加
5.高アルブミン血症
+ 解説
解答:3
解説
肝不全により意識障害、黄疸、腹水、消化管出血、腎不全などが出現します。
2.裂肛は切れ痔のことで腎不全により生じることはありません。
4.腎不全により血小板を合成するトロンボポエチンの合成低下により血小板は減少します。
5.肝不全によりアルブミンは減少します(低アルブミン血症)。
問題93
ビタミンと欠乏時の症候との組合せで正しいのはどれか。
1.ビタミンA ――――― 舌炎
2.ビタミンB1――――― 皮下出血
3.ビタミンC ――――― 末梢神経障害
4.ビタミンD ――――― 骨粗鬆症
5.ビタミンK ――――― 壊血病
+ 解説
解答:4
解説
1.ビタミンA欠乏により夜盲症・眼球乾燥症・皮膚の乾燥・角膜軟化を生じます。
2.ビタミンB1欠乏により脚気・ウェルニッケ脳症を生じます。
3.ビタミンC欠乏により壊血病を生じます。
5.ビタミンK欠乏により出血傾向を生じます。
問題94
肺塞栓症で誤っているのはどれか。
1.脱水が誘因となる。
2.I型呼吸不全を呈する。
3.Dダイマーが上昇する。
4.下肢よりも上肢の術後に多い。
5.深部静脈血栓症との合併が多い。
+ 解説
解答:4
解説
肺塞栓症は下肢や骨盤腔などで形成された血栓が、遊離して血流にのって肺動脈を閉塞した状態です。肺動脈で一次的に血栓が形成された場合は肺血栓症といいます。